[祖母の思い]

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その夜。
これまで3年間、夢に出てくる祖母はいつも「実は生きていた」という設定でした。
しかしその夜の夢では祖母は完全に亡き存在になっていて
夢の中ではありますが、死臭を感じました。
そして無言で私に指輪を2つ差し出したのです。

目覚めてきっとこれは祖母からのメッセージに違いないと確信しました。
そして祖父にこの夢の話を打ち明けると、

「遺品の指輪をおまえにあげるようにっていうことだろうね。
仏壇の引き出しに入っているから開けてごらん。」

と言われました。
私は仏壇の引き出しを開け、指輪のケースを見つけました。
開けてあっと息を呑みました。
指輪は夢と同じく、確かに2つあったのです。

きっと祖母に私の言葉が届いたのだろうと確信しました。
その後はお向かいさんの夢枕に祖母が立つことはなかったそうです。

それから12年。
祖父も天寿を全うし祖母の元へと旅立ちました。
亡くなる数週間前、祖父は
「おばあちゃんが時々迎えに来るけれど俺はまだ逝けない。」
と生への執着心を見せていました。
残された家族の思いを一番理解しているのは祖父です。
何より、私の結婚を心待ちにしていてくれていたので
まだまだ健在かと安心していたのですが…
結婚が決まったよ、と伝えようと思った矢先に祖父は旅立ちました。

奇しくも祖父が亡くなったのは86歳でした。
祖母が生きていれば84歳の年。
本来祖母が授かったはずの天命を全うしていれば84歳になっているはずでした。

単なる偶然とは思えずにいます。
二人はきっと一緒に旅立つ運命だったのですね。
だから祖母は祖父を迎えに来たんだと思います。
深い夫婦愛に今でも胸が締め付けられ、思い出すたびに鼻の奥がツーンと痛みます。

文章力がないのでうまく表現できずに申し訳ありません。
感傷的に書いてしまいました。


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