[祖母の思い]

怖い話というより切ない、不思議なお話です。
私の実体験です。

私が高校1年の夏、突如祖母が亡くなりました。
亡くなる二日前に祖母を見舞ったばかりだったのでショックは大きかったです。

その時の祖母との会話。
入院中ですっかり弱気になっていた祖母。
そんな様子に何か感じるところがあったのでしょうか。
私は思わず、
「おばあちゃん、馬鹿なことは考えちゃいけないよ。」
と言ってしまったのですが、
「何を言ってるの!そんな恐ろしいこと!」
と一括されました。

その勢いに安心し病院を後にしましたが、祖母はその翌々日に
自ら命を絶ちました。
一時退院中の悲劇でした。
何の前兆もなく、身辺整理もせず、遺書もなく、ただ突然に。

今でも私はあの時の会話を悔やんでなりません。
もしかしたら祖母を救えたのではないかと。

それから3年が経ち、私は大学生になりました。
お盆休みに祖父宅を訪れていた時のこと。
お向かいのおばあさんが尋ねてきてこんなことを言いました。

「うちのひいばあさんがね、あなたのおばあさんが夢枕に立つって言うのよ。」

お向かいのひいおばあさんは昔から霊感のある人とご近所でも有名でした。
そのひいおばあさんによると、祖母は

「84歳まで天命を授かったのに自ら粗末にしてしまって浮かばれない。」
「どうか私が首をくくった縄を○の川に流して欲しい。」

と言ったそうなのです。

「それでもう夢枕に立たないでとお墓参りして来たところなのよ。」

「それは申し訳ありませんでした。よく伝えておきます。」

私はそう言ってお向かいのおばさんを見送りました。
そして祖母の位牌に向かって手を合わせました。

おばあちゃんが後悔していることはよく分かったよ。
あの時は、おばあちゃんは自ら人生を選択したんだから
後悔はないのかもしれないって思った。
でも残された私達の気持ちに気付いてくれたんだね。

おじいちゃんもね、時々夢の中でおばあちゃんに呼びかけられるって言うの。
でもね、明らかにおばあちゃんなのに顔だけが見えないって。
そういうことが何度もあったんだって。

おばあちゃん、きっと後悔していておじちゃんに申し訳ない思いで
顔向けできないと思っているんでしょう?
だから顔を見せないんでしょう。

でもね、もう何も心配しなくていいよ。
後悔しているのは分かったから。
ゆっくり休んでね。
そしてもうお向かいさんには会いに行かないで。

それより私達に会いに来て。
誰よりおじいちゃんに一言謝って。
顔を見せてあげて。

もし私の気持ちが伝わったら、おばあちゃん、会いたいけれど
おばけじゃ怖いから夢で会いに来て。
お願いします。

そう祈りました。

続く