[逆吸血鬼と合わせ鏡]
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まさに不意打ちだった。

じゃあ外にいるのは?

いまだにドアを叩き続ける何者かのせいで俺完全パニック。

必死にトイレの端に寄ろうとして、便器の上によじ登っていた。

そしたら、ドアを叩く物音がぴたりとやんだ。

かわりにガチャリと鍵をかけていたはずのドアが開いてゆく。

俺もうくぁwせdrftgyふじこlp状態、たぶん走馬灯が流れてたかもしれない、俺死んだと思ってたもん。

そこにいたのは、同い年の子、同じパジャマを着ている、というか俺だった。

そいつと眼があいそうになったところで、自分の中の何かが切れた。

便器から飛びおりて、まずドアを蹴飛ばした。

ドアから体半分を除かせていたそいつは、その一撃で予想外にぶっ飛んだ。

まるで体重がないかのように、吹っ飛んだそいつはそのまま鏡の中に吸い込まれる。

すぐに、トイレのすぐ近くの勉強部屋に入り、目の前にあったランドセルからアルトリコーダーを取り出した俺は下半身丸出しで鏡に突撃していって、その鏡を叩き割った。

実を言うと、ドアを開けてそいつと眼があいそうになったあとの記憶は残っていない。

だから、鏡を叩き割ったや、そいつが鏡の中に吸い込まれたとかいうのは状況証拠からの推測である。

気づいたときには、騒ぎを聞きつけて二階に上がってきた親に羽交い絞めにされていた。

手にはアルトリコーダーをもち、地面には鏡の破片が散らばり、下半身丸出しだった。

当然、家は大騒ぎになり、こっぴどく怒られた上に、翌朝速攻で病院に連れて行かれた。

足をガラスで切っていたからだ。

しばらくは学校まで車で送り迎えされ、体育の参加もままならなかった。

それから、あの鏡は粗大ごみとして捨てられた。

結局、あれが何だったのかはわからずじまい。

幽霊なのか、ドッペルゲンガーなのか、それともただの妄想だったのか・・・・・

あの鏡に何かいわれがあったのかもしれないが、親にきいても心当たりはないらしい。

その後、鏡のあった場所には鳩時計が置かれるようになった。

これも深夜に突然鳴ったりするので、それでまた怖い思いをしたがそれは別の話。

ただいまだに俺の中でしこりのように残っている気がかりなことがある。

それはたまに自分がトイレのドアから自分を覗いているという夢をみること。

そして自分が左利きであること。

はじめ、親に左手で箸を持っていることを咎められ矯正されたが、いまだに箸と鉛筆以外は左を使っている。

もう10年以上も前の出来事だから、記憶違いしているだけかもしれないが、どうも自分はあの事件が起こる前は右利きだったような気がしてならないのだ。

何故なら、あの事件以来足を怪我していることを差し引いてもしばらく様々な面で不自由を強いられたようなきがするからだ。

いまでも、鏡を見ると鏡の中の自分がにらんでいる、ような気がするだけの話である。


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Part196-2
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