[逆吸血鬼と合わせ鏡]

俺が小学生のときの話なんだが、昔「木曜の怪談」という番組があって、そのせいで暗闇を極度に恐れるようになっていた時期があった。

夜外に出れないし、自分の家だって行く先々の電気がついてないと進めなくて、電気のスイッチを求めて廊下を這っているような有様。

昼間ですら、暗い校舎の影や、人気のない路地裏には近づけない。で、ついたあだなが「逆吸血鬼」

しかも、家の近くには5年近く動いていない下水処理場の廃墟や、ペット墓場になってる森が存在してるから幽霊がでてもおかしくないと当時は本気で思ってた。

で、木曜の怪談で最初に見た話が合わせ鏡になっていたのが救えない。

当時「地獄先生ぬ〜べ〜」で鏡に潜む悪魔の話をやっていたこともあって、いつも鏡に幽霊がいないかとおびえる毎日。

風呂に一人ではいるのは、夏休みの宿題など生ぬるいくらいの苦行だった。

だって、髪洗っているときに鏡から自分が除いていたらすごく怖いよね?

洗面所で、「鏡の向こうのドアの隙間からもし人がにらんでいたら」と思うと死にそうになるので、ドアや隙間は必ず閉めて、壁際にたって歯磨きしていたくらい。

00時におきてるなんてとんでもない!

当時廊下の途中に鏡があったから、それまでに寝るか、00時になったら二階の寝室に行けず、一階で親が寝るまでがくがく震えていた。

そんなわけで、自分は21時になったらビビリながら二階に上がって、すぐ布団をかぶり目を粒って震えながら寝ていたんだが、

急に腹痛で目が覚めた。

時計を見たら23時半、もうすぐ00時。二階の廊下には鏡があり、しかも二階のトイレの真正面にある。

とてもじゃないが、行きたくない。しかし、一階にいくのはさらに嫌だ。

そんなこんなでで悩んでいるうちにも腹痛はひどくなっていく。

このままではもらしそうだった。

すでに11時45分になっていた。

こうなったら速攻でトイレに行って、速攻で出して、00時になる前に速攻で戻るしかない。

そう決意し、布団から起き上がり、廊下の鏡を見ないよう目をつぶりながら、廊下の壁を手探りで這っていって、ようやくトイレについた。

すぐスイッチを閉めて、ドアを閉めて、パンツ脱いで、至福の瞬間を味わっていた。

ようやく腹痛が落ち着いた後、トイレットペーパーをとろうとしてふと置いてあった時計が目に入った。

後一分足らずで00時になろうとしていた。

ヤバイ!すぐにでないと、でもいまでたら間違いなく00時になっている。

ドアを出たら鏡がある。

合わせ鏡じゃないけど、手鏡程度で異次元の扉が開かれるなら、ドアの取っ手(真鍮)で合わせ鏡にならない保証がどこにあるんだ!?

と本気でなやんだあげく、篭城することを決めた。

合わせ鏡はたしか00時00分から00時01分までのあいだだから、その間、この中にいれば安全だ。

その後、トイレから出て鏡を見ずに速攻で部屋に戻ろうときめた。

ダンダンダンダンダン!!!!

いきなりドアをたたかれた!

俺は、うわあああああ!!!って叫んだ。

考えても見てくれ、ただでさえ幽霊にびびってる小学生が深夜トイレに篭ってたら、いきなりドアを叩かれたんだから。

いまでも、ビビル自信がある。

でも怖いのはそんなところじゃない。

何が怖いかって、親は今二階にいない。

親は必ず00時30分以降じゃないと二階に上がらないから、わざわざ二階のトイレを使う理由が思いつかないし、第一下から来たなら足音でわかる。

続く