[妹]

妹の話
うちの妹は小さい頃大人しいというか1人で遊ぶのが好きな子だった
よく母親の鏡台を前にしてボソボソ独り言を言ったり
誰もいない部屋でユマちゃんの絵を描いたりしてた
ユマちゃんというのは妹の想像上の友達らしくいつも傍にいるらしかった
そんな妹をちょっと気味が悪いと思ってた
ユマちゃんの絵は描かなくなったが独り言は高校生になっても続いてた
妹は大学進学で一人暮らしすることになり家を出た
いろいろ心配だったが遠方の大学だった為妹とはお正月まで会うことはなかった
お正月に帰省した妹にびっくりした
服装が派手になり性格も明るくなっていた
親は都会生活の影響で変わったのだろうくらいにしか思ってないのか
まるで何も変わってないかのごとく妹に接していた
これではまるで異質なのは私の方ではないか
そして夕食時に気づいた
妹が右手で箸を持っていることに
ただそれだけのことにゾッとした
妹は左利きだったのだ
そのことを指摘すると努力して矯正したのだと言う
何度か矯正しようとして18年間無理だったものが
たかだか数ヶ月の一人暮らしで変わるものなのか
私にはもう全くの別人にしか思えない
我慢出来ず「あなた誰なの?」と口にしてしまった
妹は私のおかしな質問に驚いた様子もなく
「やだな。何言ってるの。繭だよ」と淀みなく答えた


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