[回線一本の関係]
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「何、言っているん?」
俺は彼女の言葉を理解しようとしなかった。
すると彼女はまたかすれた小声で何かを言った。よく聞き取れなかったけど恐らく「ありがとう」と言ったのだと思う。
彼女はその直後電話を切った。俺はすぐさま電話をかけなおそうとしたが出てはくれない。
メールを送ろうとすると、あっちからメールがきた。何通も、何通も。
それは彼女の目、顔、手首、裸体、彼女の体の写真が沢山送られてきた。彼女の目はまるで焦点があっておらず、
目のクマは酷く、髪もボサボサで、目がとても腫れている。泣いていたのだろうか。そんな時に思うのもなんだったが、とても綺麗な人だった。

俺は彼女に、「今日はもう寝て落ち着きな」と一通だけメールを送信した。
翌日、彼女に電話をかけたが出ない。メールを送っても返ってこない。
しばらく、彼女はほっといたほうがいいかなと思い、一週間ほど電話やメールはしないようにした。
一週間後、俺は電話を掛けた。
「その電話番号は使われておりません」
解約されていた。勿論、メールも届かず。
俺は急いで彼女が昔書いていたブログにアクセスした。すると、四日前に記事が書かれていた。
そこには、遺書とも取れる重たいポエムの様な事が書かれていた。
俺は直感で、彼女は死んだのだと思った。そう思うと俺は寝られず、携帯にあった彼女に関連した物全てを削除した。
本当なら彼女の為に泣いてやるのが一番なのだが、俺は泣けなかった。ただただ、冷たい不安に、四六時中襲われていた。
回線一本の関係…身内ともいえない、でも他人とは思えない。そんな関係の人が、こういう形で死ぬというのは、悲しさのより先を行く事がわかった。
怖い体験ではなくてごめん。


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