[犠牲]
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分けがわからない、というのは今になって思う話で、
その時は怖くてたまらなかった。
この4つの部屋には何もなかったから、1階で何かあったのは間違いない。
けれども、3人は帰ろうと促してくるので帰ることにした。
無事家に到着。
やっぱり噂は噂だったんだろう。
 
次の日、3人の内の1人が死んだとの報告が来た。
警察らは自殺と判断した。
密室で胸にナイフが刺さっているのをおやが発見。
俺たち3人もたまたまだろうと信じた。

学校で2人の内の1人が死んだとの報告が来た。
警察らは事故と判断した。
家庭科の授業で包丁がすべり左腕の動脈を切りつけた。
俺たち2人はたまたまだろうと信じれなかった。

放課後、廃屋の一階の一番広い部屋に俺たちは向かう。
昨日よりも悪臭悪寒が強くなったような気がする。
その部屋は消えかかっているが血だらけだった。
ほこりもない。おかしかった。
ふと、後から声がかかった。
友人は俺と並んでいたから、それ以外の人としか考えられないが、
来る途中、周りには誰もいなかった。
それもそのはず、大人たちは何故だかここの話をしたがらないし、
子供たちも怖がってここに来ない。
俺はゆっくりと振り返った。

俺たちが見たのは老人の幽霊だった。
生まれてこのかた幽霊なんて見たこともないが、何故だかわかる。
見える、ただ本当に見えるだけだったから、気配がないから。
老人は言った「くるのが遅すぎですよ。紙、読んだでしょう?」と。
俺たちは何も言えなかった。怖くて。
老人は続けて「来ないから、犠牲者が出てしまった。
       もう少し遅ければあなたたちも……」
俺たちは何もいえないが老人はそんなこと気にした様子もなく続ける。
「では、お話しましょう。
 ここに泊まるのは将来、何かの大きな夢を持つものたちです……でした。
 が、あの日全てが終わりました。あやつらの手で…
 彼らはここに泊まってる者たちをほとんど殺しました。
 理由はおそらく金ですね。だから、ここにいるものはここに来た、
 夢を持つ者を殺していきました。怨念とでも言うのでしょうか?
 私は人を傷つけたくないので、その人の夢を奪うことにしました。
 そうすれば死ななくてすみます。」
それを聞いたとたん目の前が見えなくなって気づいたのが家のベッド。
隣には泣きじゃくる母と黙り込んでいる父。

俺が気絶してる間のことをその晩聞かされた。
手紙といっしょに俺は玄関の前で倒れていた。
俺のほうには問題はなかったのだが、
手紙には「あなたの夢は叶えられなくなりました。あなたの夢は普通のサラリーマンですね?
     あなたはどこの高校にもいけないでしょう。
     あなたの学力はすべて0にさせてもらいましたから。」
とあったらしい。


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