[ハウリング]
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で、いよいよ一番最後の部屋…心中があった部屋に入ろうとしたとき、音声さんが他のみんなを必死に止めはじめるんだ。

「聞こえないのかよ、ここは止めよう」

って。
で、テープをよく聞くと、ぴーって甲高いハウリングのような音が入ってる。
これは現場でも聞こえていたらしい。

「ハウリングだろ?気にするなって」
「ハウリングなんかじゃねえよ!」

とかなんとか言い争いしてる間に、カメラマンが襖を開けて中を撮りはじめていた。
中は、たった今まで人が住んでいた、って感じだった。
ビデオにも…算数のドリルとか、畳んだ夕刊とか…そういうのが転がっているのが映ってた。
絞殺と首吊りが死因だったんで血痕は残ってなかったんだけど、部屋のあちこちに暴れて物を倒したような跡があって、すごく生々しい光景だったんだ。
そして、部屋をバックにリポーターの締めが録画される。

「おい、大丈夫か?」

正規の録画が終わった後、他の人が音声さんに声を掛けているのが聞こえる。
音声さんは、なんか震えるような声で、こう繰り返してるんだ。

「殺される…殺される…」

って。それでテープはおしまい。
で、全部見終わったあと、チェックしてた人たちの中の一人がこう言い始めた。

「例の部屋に入る直前のハウリング、襖を開けた途端に低くなりませんでした?」

って。
どうも、音声さんが怯え始めたのはそのハウリングが聞こえてからみたいなんで、みんなそれが気になってはいるところだった。
んで、そこのシーンだけ何度か繰り返して再生してみたんだけど、何に音声さんが怯えているのかがわからない。

続く