[合宿]
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その日は夜も遅かったのでそのまま宿舎に引き返すことになり、S子の行方は分からずじまいだった。
次の日になって顧問は警察を呼んで、湖周辺を捜索してもらったところ、信じられないことに
ボート乗り場の近くの水の底からS子の死体が見つかった。しかもどういう訳か、死体の首は鋭利な刃物で
切り取られたかのようにして無くなっていたそうだ。
突然の出来事にうろたえ、泣き出す部員がほとんどだった。部員には警察の質問がいくつかあったが、
「最後にS子さんと接触した場所はどこだったか」という質問に対しては、ほとんどの部員が宿舎と答えたが、先生も含めて5人は、花火をしている時に湖で見たと答えた。

しかし5人とも彼女と直接話したりした訳ではなく、ただ姿だけを見たと言うのだ。

合宿は中止になって、部員達はバスで学校に戻り、そのまま解散ということになった。
警察はこの出来事を殺人事件として調査を続けたが、結局その後、湖では何も見つからず、事件の真相は
謎のままだった。

A美とK恵は精神的にまいったせいか、夏休みが終わっても部活どころか、学校にすら
来ることはなかった。そしてある日顧問の先生に呼ばれて、こんな話を聞かされた。

あの日の夜、先生は花火をしている時にS子の姿を確認しているが、その後見失い、しばらくしてから
湖の向こう岸にいる彼女を見たそうだ。その時は花火の光もあり、何かの見間違えだと思っていたそうだが、
向こうにいたS子の顔面は赤ペンキで塗りつぶしたかのように真っ赤に染まっていたと言う。

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