[エレベーター]
前頁

『あきらかに今EVが動く音がしてるんですけど』


時刻22時20分
 そ ん な わ け は な い
『ちょwよりいっそう自分の首を絞めるのはやめたまえよww』
『冗談でそんなこと言うわけないじゃないですか』

後輩がマジ泣きし始めた
そんな雰囲気じゃあ、いくらドSと名高い私でも怖くなるに決まっている

気づかないうちに二人とも声が震えている
信じがたいことに、確かにEV特有のゴォーッという音が聞こえる
着実にあの狭い密閉空間が7階に迫っている
目に見えない何者かが乗っている可能性は、今の状況下だと多分高いんだろう
でも、EVランプは消えている
22時にEVの電源は切られているはずだ
しかも、翌日に備えて、2台あるEVは両方とも1階に下りているはず。
7階にくるはずがない。

ぐるぐるとありえない情報が私の脳内に取り込まれ、
ヤバイという生物的本能が働き始めた。

『早いとこ、おりるよ』


後輩の手をとって階段を駆け下りた。

6階に差し掛かったとき、7階フロアからEVのベルとドアが開く音がした。
肌というか、感覚が感じる冷たい空気。

やばい。

二人とも顔が引きつって、半泣き状態で駆け下りた。
絶対振り返っちゃいけない。
今振り返ったら、絶対階段の上の方で目があう。
目、あるのか?
いや、そんなことを考えてる場合じゃない。逃げなきゃ、後輩連れて帰らなきゃ。

『私はチューターでも講師でもありませんので君のお力に離れません!!!』

今考えると、よくわからないことを口走りながら1階までノンストップ一段飛ばしで駆け下りた。


7階で止まったEVは、しまる気配もなく止まっているようだった。

本校舎の教務に泣きながら帰ると、
職員さんたちが慣れた雰囲気で

『ああ、EVきたの?』


たまにあるんだよね、たまにね。
もうそろそろ模試のピークだし、質問が溜まってるんだろうね・・・

シャレにならない言葉を残し、帰って行く職員たち。
別館2階の更衣室に着替えに戻らなくてはならないことに気がつき
テンパりながらも、呪われた落し物に気づくことになるのは、この後のお話。
また次回気が向いたら書こうと思います


次の話

Part189menu
top