[血塗れのカッサライ]

私の実家はそれなりに古くからある大きな家で、田舎にしても広い庭がある家だった。
仕事を引退した祖父母は庭師さんに任せていない部分の庭の手入れを趣味にしていて
家の庭の入口には農具がいくつか掛かっていた。

私が高校生の時だった。
部活から帰り、自転車を停めてふと顔をあげると、何故か農具が目に付く。
何だろう?違和感あるなーと思いながら農具に目を凝らす。
その中のカッサライ(金属部分が半月型の農具)が血に染まっていた。
カッサライの錆の鈍さと血の鮮やかさのコントラストにかなりギョッとしたのをはっきり覚えてる。
何だか胸が不安になって嫌なドキドキが止まらない。

その日の夕飯の時。
母にカッサライが血塗れだったことを尋ねてみた。
母は蒼い顔になり、祖母を見やり、話すのを渋る。
祖母が席を立った後、母は渋々話してくれた。
「おばあちゃんがね、家の庭にいた白い大蛇の首を刈っちゃったのよ…」
母は動物が好きな人で、どんな動物でも追い払ったりする人では無かった。
特に裏庭で静かに暮らす白い蛇をこっそり我が家の守り神かも、と思い大事にしていたそうだ。
しかしこの日、母が裏庭で洗濯物を干していると、後ろから祖母の悲鳴が。
はっとして振り返ると、白蛇がスッと庭に出てくるところだった。
祖母はキャーキャー叫び
「怖いい!蛇怖いい!」
と乙女のような身振りながら、思いっ切りカッサライで蛇の首を刎ねたそうです。

後日、祖母に話を聞くと
「だって怖くて気持ち悪いんだものお。私みたいなか弱い女は蛇とか怖いの!」
と可愛らしい仕草で話していたが、自分のことをか弱いと言いながら蛇の首刎ねるあんたのが怖い。
75歳にしてこの言動がオカルト。

しかしこれだけでは洒落怖ではないが、それまで不思議な位うまくいっていた家の事業は逆に不思議な位傾き
祖母は一命は取り留めたものの蜘蛛膜下出血で倒れ
我が家は混乱中なのです。

白い蛇を馬鹿にしたらいけない。
あんまり読むと怖くないけど…
私は我が家の行く末が怖い。


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