[旅館での一夜]
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しばらくして彼女がココアを持ってきてくれたのでそれを飲み
押入れの上段から布団を取り出し
敷いて早めに寝ることに。(布団も自分で用意する旅館でした。)
二人とも疲れていたため直ぐに眠りについた。
が、
夜中にいきなり横の部屋から叫び声が聞こえて目を覚ました。

彼女と二人で顔を見合わせて何があったのか耳を澄ましていると
横の部屋の客が廊下にパタパタと逃げている音が聞こえる。
女性客2人らしく二人でワーワー言いながら廊下で騒いでる。
夜中に何を考えてるんだ、というのと睡眠を邪魔されたのとで
文句を言おうと怒り気味で廊下へ出た。

俺が廊下に出た事に驚いたようで、女性客は大泣きしながら
「キャーーーー」と叫びだす。その声に、彼女も何事かと廊下へ出てきた。
彼女達は泣きながらガクガク震えており、一人に至っては発狂状態になっている。
さすがに、怒る事はせずに「どうしたんですか?」と聞くも震えるのみ。
自分達の部屋へ呼ぶも拒否して首を振る。

しばらくその状態が続いたが、彼女らは段々と落ち着いてきた。
しかし「どうしたんですか?」と聞いてもその質問には一切答えない。
ただ、彼女達の部屋に何かあるようでずっとその方向だけをみて「あっ。あっ。」という感じ。
何か不審者でも出たのかと思ったため、自分の部屋に戻り、入り口にあった箒を持って
彼女達の部屋へ入ろうとすると、「あ、や、やめたほうが。。」と服を引っ張り止められる。
「あ、いや、大丈夫ですよ。何かあれば直ぐに逃げますから。」と言い、中へ向かった。

中は明かりがついており、入り口から部屋全体を見渡せる。
変わったところは何も無く、誰もいない。
廊下へ戻ろうとしたときに入り口の真横から
ズズズ ズズズと音がした。
焦って廊下へ逃げ出したところで、誰かが入り口横の押入れに居るんだなと思った。

すぐに部屋のドアの前で身構えて、「おい、出て来い。」と叫んだ。
すると横の部屋から男性客が出てきた為、又女性客たちの悲鳴が聞こえた。
男性客に事情を話し、多分部屋の入り口横にある押入れに
誰かが隠れてるのではないかと
伝えると男性が従業員を呼びに行くように女性達に指示した。
男性客は、「私が中へ行くから援護してください。」と彼の部屋から同じように
箒を持ってきて中へ。

まずはドアを開けて部屋を見渡す。誰も居ない。
次に横の押入れのドアの前に立ち、開ける準備をした。

その時、
ドン!!ドン!!っと押入れから鳴り、ズズズ、ズズズという音と共に襖が
少しずつ開き始めた。
襖はゆっくりと開いていき、その襖の間から何かを引きずっている音とともに
人の体の一部らしきものが見え始めた。
襖の間から手が出てきた瞬間に男性客は思いっきり襖を閉めて、
相手の手をはさんだ。しかし、その手の主は何も言わない。
それどころかズズズとはさまれた手を出してくる。
すかさず、男性客はその出てきている手を思いっきり箒の柄の部分で殴る。
が、相手は何も言わない。
俺は何だか嫌な気分になり箒でおもいきり手を中に押し込めた。

その瞬間、
ガンガン ガンガンと後ろの窓がたたかれれ
「ああぁあぉっぁあ」と変な声が聞こえたので振り向くと
窓ガラスがまるで鏡の様な状態になり(外が真っ暗だった為)、部屋の様子が映っていた。
箒を持って立っている俺。
その横に同じように箒を持って立っている男性客。
部屋の様子は同じ。
ただ違うのは、
窓ガラスに映っている押入れは開いており、
押入れの上部分に奇形の人間らしきものが、ベタと這い蹲って
こちらを見てる。一瞬何がなんなのか分からないまま直ぐに
押入れに向き直ると部屋の押入れが開いた状態になっている。
ただそこには誰もいない。男性客も同じものを見たらしくキョトンとしてる。

どちらともなく、再度窓ガラスを見るも窓は部屋の様子を映しているのみ。
そこには先ほどの奇怪な人物は居ない。それから30秒ぐらいたったあとに
従業員の女性を連れて来た彼女達が戻ってきた。
男性客と俺は何をどう説明すればいいのかわからなかったが、
起きたままの事を話す。女性達は「もう、いやー。帰る。もう、帰る」
と泣きながら叫び、従業員は
「そんな事在る分けない、今までそんなことがあったことは一度もない」
の一点張り。男性客が
「確かに居た筈なんですけどね。。なんだったんでしょうか。」と俺に聞いてくる。
彼女も「本当に見た?見間違いじゃなくて?」と不安な様子。
俺も本当に見たのかどうか段々と分からなくなる。
ただ、箒で叩いた時の手の感触などはある。男性客も同じようで、
「見間違いのはずはないですけどね。」と言う。

続く