[ドライブ]
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車が走り出し小腹が空いた僕はコンビニの袋からお菓子を取り出し食べようとしたんですが
シゲ兄にいきなり頭を小突かれ「それはお前用じゃねぇ」と言われ
「じゃぁ誰が食うんだよ?兄貴お菓子なんて食わねぇだろ??」と言うと
「これからお参りすんだよ、お供え用だバカ」とシゲ兄
「こんな夜中にお参りって・・・何のお参りだよ・・・??」と不安になったんですが・・・
しばらくの沈黙の後「水子・・・」と言い放ちました。
俺はその時点で嫌な予感がしてたんです・・・
このシゲ兄という男は地元ではDQNの親玉の様な男でしてハンパじゃない遊び人なんです・・・
水子の数で野球チームが出来るほどで歩く生殖器と呼ばれていました。
「この間この辺ドライブしてたら水子供養してるトコ見つけてさその内
行こう行こうと思ってたんだわ〜」とさらっと言うのですが
俺としては意味がわかりません・・・「うわぁ〜ありえねぇ・・・」と思い
時間も時間だし後日に付き合うから今は止めにしようと説得したんですが
思いたったら吉日、これからのドライブの安全祈願もかねてお参りすると言って聞きません
そうこうする内に巨大な寺に到着しました。

回りは鬱蒼とした林に覆われ時間帯も時間帯なんでかなり良い雰囲気です・・・
車を降りて入り口のほうへ向かうと案の定、鉄柵がかまされており中には入れないようになっていました。
「ほら、もう閉まってるじゃんよ入れないから後日にすんべよ」と言ったんですが
シゲ兄は無視・・・鉄柵をよじ登る気マンマンです・・・
「マズイって・・・不法侵入だぞ・・・通報されたらどうすんだよ!!」と言ったんですが
次の瞬間にはヒョイっと鉄柵を乗り越えてました。「早くしろ」と言われ
一人で待ってるのも怖すぎるので仕方なく僕も鉄柵を乗り越え境内に侵入しました。
ずらっと並んだ墓を横目に進んで行くと境内の奥に水子地蔵と書かれたお堂が見えます。
お堂に入りお供えのお菓子を備えると賽銭を投げ拝みました。
僕は早くこの場を立ち去りたい一身だったんですが
シゲ兄の方は「お前ら俺を守れ」とかなり身勝手な拝みっぷりでした。
お参りを済ましシゲ兄はかなり満足げな表情で車に乗り込み地元への道を急ぎました。
俺はこの時点で心霊スポットだとか怖い話が全く駄目なタイプでかなりビビッていたんです。
地元への道中、悪乗りしたシゲ兄は火葬場の真下に有るトンネルで車を止め記念撮影を始めたり
海沿い道路を走っていた時には自殺の名所である崖に寄って、また記念撮影です。
そんなこんなで地元まで後1時間チョイと言う所まで来ました。

山道を抜けて走っていると街灯もほとんど無く薄暗い中を走行していました。
順調に走行していたんですが路肩に人影が見えました。一瞬ドキッとしたんですが
すれ違いざまに見た人はスクーターを押す爺さんでした。
俺はこんな山の中、早朝からバイクでもぶっ壊れたんかな?と思っていたんですが
シゲ兄が「今の見えた?」と変な質問です。
「見えたって何よ?スクーター押した爺さんだろ?」と言うと・・・
「あ〜あ、見えちゃった??マズイな〜ちょっと悪乗りが過ぎたかな?」と
訳の分からん事を言い始めたんです。
俺は冗談で俺をビビらせようとしてるんだと思ったんですが懐をまさぐり
塩の入ったパケ袋と数珠を取り出し俺に渡しました。
書くのが遅くなりましたがシゲ兄は所謂、見える人なんです。
普通、見える人と言うと心霊スポットは避けて通るし
自ら危険に首突っ込む様な事はしないのが普通だと思うんですが・・・
この人、自ら喜んで突っ込んで行くタイプなんですわ・・・
「とりあえずヤバイやら塩舐めて数珠握り締めておけ」と言われ言われた通りに
塩を舐め数珠を握り締め訳もわからず「南無阿弥陀仏」と唱えていました。
そうすると「あーーーーーーキタキターーーーーーー!!」とシゲ兄のテンションが上がりました。
その瞬間にサイドミラー、バックミラーetcが塗られた様に真っ黒になり
視界が奪われました。「ウオォーーーーーーーーーーー!!」と叫ぶ俺にニヤけた表情のシゲ兄が
運転席側のサイドミラーを指差します。
恐る恐る指差された方向を見ると・・・サイドミラーに女の物と思われる手がぶら下がっています。
手首から先だけの手がぶら下がっていたんです・・・・・
俺は「ぎゃぁぁあぁーーーーーーーーーーー!!」と叫びシートにうずくまりました。
「シゲ兄・・・何これ・・・?」と震える声で聞くと・・・
「ん?魔界だ」とサクッと返答がありました・・・・
そして「多分、死にはしねぇから大丈夫だ」と言うのですが・・・恐怖で泣きそうになりました。
どれ位時間が経ったのかは分かりませんが「もう抜けたぞ」と声を掛けられ顔を上げると
朝日が昇り始め、車の異常も無くなり見慣れた町並みが近づいていました。

続く