[足音]
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そして、とうとう私が奴の姿を見ることになる日が来ました。

その日も相変わらず、私はテレビの音を少々高めにして、茶の間へ通じるドアは全て閉
じて1階の明かりを全て点けていました。時間は多分、夜の8時ぐらいだったと思います。

…いつもの様に、2階を歩き回る音が始まりました。しかし私は『大丈夫、茶の間へ通じ
る2ヶ所のドアは閉じているし、1階の明かりは全て点けている。幽霊が扉を開けれられ
るもんか!』と、自分を勇気付けていました。ところが…。

足音は「トントントン…」と足取りも軽く、階段を降り切ってしまったのです。そして、
明らかに茶の間へ一直線に歩いて来ている!
『そんなバカな、1階の明かりは全て点けているのに…』と驚いている私の耳に、更に信
じられない音が聞こえました。

「カチャ…キィ…」

私は慌てました。足音はドアを開けてしまったのです。
この時点で私はすぐに逃げるべきだったのでしょう。が、私は金縛りに掛かったかの様
に最後のドアを凝視していました。

「ギシ…ギシ…」足音が廊下を歩いてきます。そして、徐々にドアの曇りガラスに黒い影
が映り込んできました。その影は、ゆっくりとドアノブに手を伸ばし…。
それを見た瞬間、私は弾かれるように裸足で外へ飛び出していました。

結局、私は親と姉が帰ってくるまで、ずっと外で泣きべそを掻いていました。当然親にも
話しましたが、そんなバカな…と一蹴。ですが、何か思い当たる節は有るようでした。そ
して私自身、後になって我が家で起きる現象の原因(と、思われるもの)を知る事になる
のです。

私の話は以上です。他にも話はありますが、「洒落にならない程」では無いと思われま
すので、割愛します。

すいません。原因を書いてませんでしたね。昨日は眠くて、そのまま寝てしまいました。

原因(と、思われるもの)は単純というか何と言うか…実家に隣接している病院敷地にあ
りました。そこは病院そのものが建っている訳ではなくて関連施設が建ってるだけです
ので、全然意識してませんでした。

ただ、地元の人、特に古くから住んでいる方々に言わせると「夜中に人魂を見た」とか「影
だけが歩き回っていた」という噂があったようです。知らなかったのは私だけ、みたいな。

それともう1つ。これは原因かどうか知らないのですが、例えば家の屋根裏に御札を貼る
事ってあるんでしょうか?実は、私の実家は別の方から買った中古住宅です。
で、かなり以前になるんですが、私の父が屋根裏に入った際、数ある柱のうち1本に御札
が貼っているのを発見したそうです。

そして、ここから先は現場を見た姉貴の話(その時、私は何かの用事で現場に居ません
でした)なんですが「御札を剥がしたら、柱にヒビが入った」。

御札の現物は父が処分してしまった上に、父自身は既に亡くなっているのでどんな御札
だったのか、何故剥がしたのか不明なんですが、その御札を剥がしてからは、私も姉も
幽霊を見る事が全くと言って良い程、無くなりました。

通常、御札って魔除けとかそういう効力があって、幽霊が出るから御札を貼る、とかです
よね?それが我が家に至っては逆だったみたいです。ちなみに、前の方から家を買い取
る際、モメたとかは一切ありません。


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