[足音]

私自身が体験した話をします。以前、他のスレにも書いた実話です。
私の実家は、いわゆる「出る」家です。但し、現在は出ません。

風呂場から足だけニョッキリ出ていたり、夜に勉強机に向かっていると、自分の後ろに
「やたら背の高い人」が立ってたり。あと、私の姉が夜中に、ザンバラ髪の女性の首だ
け浮いているのをを見たことがあるそうです。

以上のように話すと色々あるのですが、その中で印象深かった体験を以下に書きます。
結構な長文になってしまう事をお許し下さい。

当時、私の両親は共働きで、姉は習い事をしていました。
必然的に、私は両親と姉が帰宅するまで(家族が帰宅するのは、大体夜21〜22時頃)
1人留守番、ということになります。そしていつの頃からか…私が1人で留守番をしてい
る夜に限って、2階から足音が聞こえてくるようになりました。

問題の足音は、特に何の予兆も無く突然始まります。歩調はちょっとスローペースで歩
くといった感じで、あくまで一定の調子でした。決して立ち止まったり、早足になることは
無かったのです。そして暫く歩き回ると、これまた突然足音は止むのです。

特に荒々しく歩く訳ではないし、足音意外は特に何をする訳でもない。しかしながら、そ
れが不気味でなりませんでした。夜、家で1人っきりの時、上の階から『ギシ…ギシ…』
と聞こえてくるのです。小学生の私には、十分恐怖でした。

ところで、その足音は最初、2階の特定の部屋だけを歩き回っている様でした。
ですが、時が経つにつれて足音は、徐々に活動範囲を広げ始めたのです。

出没した当初は茶の間の上にある部屋限定でしたが、そのうち同じく2階にある、家族
の寝室も歩き回るようになりました。

そして、ある日の夜。
案の定、足音が2階を歩き回り始めました。当然私は怖かったのですが、『歩くだけ歩
いたら、いつもの様に消えるだろう』と考え、恐怖に耐えていました。ですが、その日の
足音は少々違っていました。

いつもの如く2階の部屋全てを歩き回ると…なんと階段を降り始めたのです。
しかも、ゆっくりとしたペースではなく「トントントン」と、まるで人間が降りる時の様
に、テンポ良く降りて来る!

『下に降りて来る!』私は真っ青になりました。どうする、逃げるか?けれど、何処に逃
げればいいんだ、もし足音に捕まったら、自分はどうなってしまうんだ…そんな考えが、
頭の中をグルグルと駆け巡ります。

ところが、どうしたことか…足音は途中まで降りておきながら、いつもの如くそのまま消
えてしまったのです。ここに来て、ようやく私は悟りました。足音は決して何の目的も無
く歩き回っていた訳じゃない、1階へ通じる階段を探していたのだ、と。
そして、そんな私の考えを見透かしたように、足音が階段を下りる音は、日を追う毎に
増えていったのです。

『このままでは、いずれ1階に降りてきてしまう…どうしよう…』私は急いで思いつく限り
の対策を講じることにしました。

ですが、所詮小学生の考える事です。私が行った対策とは、
1.自分が居る茶の間から階段までのドア(2ヶ所)を全て閉じておく。
2.1階の電気は全て点灯し、茶の間のテレビを常に点けておく。
3.いつでも脱出可能なように、玄関の鍵を開けておく。
といった稚拙なものでした。ですが、これが当時の私が出来る精一杯だったのです。

続く