[赤と青の炎]
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特別な丹田強化の行を余り行わない日本の武道・武術だが、丹田に蓄えた「陰」の気を「陽」の気に変換して利用する技法はほぼ全ての流派に存在する。
所謂「気合」である。
丹田で圧縮した「陰」の気を「陽」の気に変換し、鋭い発声と共に瞬間的に集中使用する技法である。
「気合」の効果は科学的にも立証されており、一説では最大30%のパワーの増大が認められるらしい。
テニスなどの球技、ハンマー投げや槍投げ等の陸上の投擲種目、重量挙げなどのパワー種目、その他の様々な競技で「気合」を応用しているアスリートは多い。

丹田力に秀でた日本人の武術は、防御力が非常に高く、攻撃は一撃集中(一撃必殺)型で、「後の先」の術理に最も適合している「静」の武術だという。
中国のものは「陰」と「陽」のバランスを重視して攻守一体を旨とし、陰陽の気の流れや攻守・動作の流れが止ることを極度に嫌うらしい。
ただ、攻撃力・防御力を高い次元で引き出すのが非常に難しく、基本功で培った力と套路等で培った技とを繋ぐ技術がないと只の踊りとなってしまうそうだ。
対する日本武術は「極め」による一点集中により気や動作の流れに「停止点」が生じ、動作が滞る「居付き」を生じやすい欠点があるということだ。
だが、攻撃・防御双方に「丹田力」を含めた力を乗せやすく「使いやすい」のが長所でもある。

それでは朝鮮のものは?
朝鮮の武術は、弓術と解放後に日本の空手から作られた韓国の国技テコンドーが有名である。
テコンドーの達人だという権さんの話では、テコンドーには丹田を強化する、那覇手系の「三戦」のような鍛錬法はないそうである。
元となった空手の流派は極端な「一撃必殺」型らしいが、受け技は豊富である。
「据え物にして打て」と言う言葉があり、型における基本の戦闘法は受け技で受け、相手を捕らえて死に体にしてから打つそうである。
だが、テコンドーは空手から受け技を受継いではいるが殆ど使わないらしい。
これは空手色が強いと言われる北朝鮮系のものや、オリンピックスタイルとは違う権さんが修行したものも共通らしい。
テコンドーは相手の攻撃は基本的に「受けない」そうである。
テコンドーの防御は、ボディワークやフットワークによる「かわし防御」が中心で、それは崩れた相手の「虚」を狙う攻撃の基点でもある。
また、テコンドーの豊富な蹴り技の元となったとされる「テッキョン」は足蹴りにより相手の重心を崩す技法が非常に発達しているそうだ。
テコンドーでは、基本的に運足や蹴りなど、足を使って相手を崩し「気の虚」を探りあい、捉えた崩れや「気の虚」を突いて相手の防御・反撃の暇を与えずに攻め切る。
競技化の為に廃れているが、実践では貫手・爪先による急所攻撃や肘・膝、そして頭突き等、防御を崩壊させた相手を確実に仕留める技が重要なのだと言う。
空手同様の拳足鍛錬や、「気の虚」を探り合い一瞬に突く為の運足と、反撃の暇を与えず防御を崩壊させる手数を出す為のスピードとスタミナが肝要ということだ。
並外れた「陽」の気力を持つ朝鮮人に非常に適合した「動」の武術と言える。
ただ、スポーツ化により相手を捕らえて致命傷を与える技が失われ、防御力が極端に低い為「残念ながら武術としては死んでいる」そうである。

日本人の丹田力の強さは昔から定評があったようである。
中国や朝鮮の呪術師や祈祷師の中には、攫ってきたり買ってきた倭人の娘に子を産ませ、その子に術を仕込んだ者も多いそうだ。
逆に、中国武術の門派には、今でも「日本人に教えてはならない」とされるものがあるらしい。
反日感情や日本人蔑視もあるが、彼らが長い時間をかけて基本功を行うことによって得られる丹田力を日本人は生来的に高いレベルで持っているかららしい。
日本人に技を教えると、丹田力の優位を利用して自らの体質に合わせて改変してしまうらしい。
また、その門派の意図しない方法で力を出し、日本人的な体の使い方で技を使うので正しく習得させる事も困難だということだ。
門派伝来の技を改変し広める日本人の存在は、伝統の技を継承し守ってきた彼らには許し難いもののようだ。
マサさんは、日本が武道・武術大国となったのは、武士による支配も大きいが、日本人のこのような「体質」が背景にあると見ているようだ。
朝鮮人的な身体用法であるテコンドーも、日本に普及すると、日本人的な改変が加えられて全く違ったものに変質するかもしれないと言う事だ。
俺は、権さんにテコンドーの指導を受けた。
蹴り技も確かに凄かったが、驚きを隠せなかったのは攻撃の苛烈さだった。
オリンピックの中継等で見たものとは似ても似つかない非常に攻撃的な、武道と呼ぶには余りに殺伐としたものだった。
ひたすらに攻撃し、効果的に技を行使する為には力の加減などは一切出来ない。
激しい動作や速度の中で動的にバランスを取るので、力を抜いたり速度を落とすと非常にコントロールがしにくいのだ。
一旦攻撃に火がつくと加減や歯止めが効かない・・・何とも朝鮮人的ではないだろうか?

続く