[立ち入り禁止]
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多少不気味さを感じつつも、足を引きずってるのだから確認しなければ、と思い直すA。
人の心配もよそに釣りに夢中になっているBを憎らしく思いつつ、
Bの方がその人物に近い為、Bに対しておーい!を声をかけるA。
その人物と同じように手を振りながら幾度か大声をあげていると、やっとBが気付いてくれた。
どうした?というような素振りを見せるBに対し、
その腕を振り回す人物の方を何度も大げさな素振りで指し示すA。
きょとんとした表情を浮かべたようなBがどうにかその人物の姿に気付き、
しばらく確認していたのだが・・・

突然、驚いたような素振りを見せたBが、岩場から足を滑らせた!
何か慌てた様子に見えるが、Aからは何が起こったのかわからない・・・
滑った時腰を強く打ったらしいが、痛がりつつも大慌てで竿と荷物をまとめようとするB。
理解できないながらも手を振る人物よりBの事が気になりだし、小道をやっと上流に歩み始めるA。
その人物の姿も徐々に大きく見えつつあるが、視力の悪いAにはいまだ全貌は確認できない。
Bは何やら言葉にならない言葉を叫びつつ、足の悪い岩場からほうほうの態で小道へとたどり着いた。
A、B,腕を振る人物、の三人がほぼ一直線500m位の中に等間隔でいる形・・・
Bは息を切らせつつ、一度だけその人物の方を振り返るとあらん限りの力でAの元へと走り寄って来た。
何なんだ、どうした!?とAも訳がわからず歩み寄りBの荷物を受け取ろうとするが、
いいから、急げ、急げ!!とやっと理解できるような言葉を振り絞るB。
BがAの右腕を引っ張りつつ車の方へと引き返そうとするも、その人物の姿から目の離せないA。
いいから、いいから、と一度渡した荷物を取り上げ、結局動かないAを諦め走り去るB。
少しずつAとその人物の距離が近まる、一体何なんだ?、目を凝らして見る・・・

・・・やっと、分かった・・・・・
残バラ髪の頭から血を流した鎧を着た武者姿の男が、
狂ったように刀を振り回しつつ足を引きずりながら、
必死の形相で何やら叫び近づいて来ていたのだった・・・

あの光は、刀に反射したのか・・・?
と、思った瞬間やっと我に返り全力疾走で小道を引き返すA。心臓が痛いようだが気にしてられない。
自分の釣り道具も沢にそのまま、何とか車にたどり着き
車中で震えてAを待つBと共にその場を離れる事ができた。
帰りの山道もなお、長い・・・ 放心状態の二人、無言の車中。
途中、地元の農家の人らしい老人が歩いていたのでAはとっさに車を降り、尋ねた。

すみません!上流の広場あたりで・・・

・・・おぉ、あそこか、立入禁止の看板立っとったろうが?

・・・・・・・・・・・・


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