[消えた友人]
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あれから5年が経ち、大学生になったある日、私は地元の本屋で偶然Cと再開しました。
懐かしさのあまり、しばらく互いの近況などを話し合ったりしましたが、
話に一段落がついたとき、彼は少し深刻な表情をして黙り込みました。
そして彼の口から信じられない話を聞きました。なんと行方不明になっていたBが
去年見つかったというのです。
それも、あの忌まわしい出来事があった森林の近くにある墓地で・・・。

更に驚くことに、彼は今、県内のとある精神病院に入れられているとの事でした。
私はBを一目見てみたいと思いましたが、Cから話の続きを聞いてその気は完全に失せました。

Bを発見したのはあの墓地へ御参りにやってきた人達だったそうですが、なんとBは
そこで墓荒らしをしていたと言うのです。スコップを手に持って、一心不乱に土を掘り、
Aの名前を大声で何度も叫び続けていたそうです。掘り荒らされた墓は20以上にも及び、
中には叩き壊された墓石もあり、元の状態に戻すのは困難を極めたとの事でした。
しかし、そんな事が本当にあるのだろうか。何年もの間、行方不明になり、誰にも知られず、突然現れた場所があの墓地だなんて。

Bは、墓荒らしをする前までは、一体どこで何をして
いたのだろうか?そもそも、何故墓荒らしなんて事を・・・?
あれこれ考えていたが、Cは私にゆっくりと語り始めた。
「俺な、去年一度Bに会いに行ったんだ。精神病院にな。警察はあの事件以来Bのことを
疑っていたし、俺だってもしかするとあいつがAをやったのかもしれないって思った。
それでBの親友ということで特別に会わせてもらったんだ。そしてBに聞いた。
『お前がAを殺したのか?今まで捕まるのが怖くてどこかに隠れていたのか?』ってな。」

「Bは言った。『逆だ!Aが俺を殺そうとしたんだ!!あの時森を出ていなかったら
お前等も俺もみんなAに殺されていたんだよ!!』と。
まともに話したのはこれだけ。あとは全部悲鳴とか、わめき声ばかりだった」

私はただ俯くしかなかった。

そしてその後、Bは精神病院を出てから、例の森で自殺をしました。
私はこれを聞いた時は驚愕しましたが、もうこれ以上は関わるまいと心に誓いました。
後悔は十分にしました。軽い気持ちで森に入ってしまった事、AやBを見失ってしまった
事、その結果、私達だけが助かってしまった事。
Aは森へ残された恨みで私達を殺そうとしていたのか。全てはBの狂気によるものなのか。
あるいは、別の「何か」の仕業だったのか。
私は今でも分からないままでいる。

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