ベッドに入りどれくらいの時間がたったのだろう、体は疲れ起きているのが辛い程
なのだが、なかなか寝付くことが出来ない。夢うつつの状態にあったその時
びちゃ
廊下の方に足を向けた格好でベッドに入っていたのだが、その足元、ドアの向こうから
その音は聞こえた。あの音はいったい、何? 気のせい、・・・なのか?
びちゃ、・・・・・びちゃ・・・。
今度は確かにはっきりと2回聞こえた。
びちゃ、・・・・びちゃ、・・びちゃ、びちゃ・・・。
その音はだんだん間隔が狭くなりながら確かに聞こえてくる。
水分、それも粘着性の高い何かが、廊下の床に滴り落ちる、そんな感じの音である。
時計をみると午前三時。
こんな時間に、他のメンバーが何かをしているのか?
何かって、・・・何をしているんだ? 思いつかない。
びちゃ、・・びちゃ、びちゃびちゃびちゃ。
もはや恐怖に耐えかね、ベッドに半身だけを起こし、廊下に向かって問い掛ける。
『だ、誰か居るのか?・・・・おいっ!』
返事は無い。ベッドから降り、恐る恐るドアを開け、頭だけを出してゆっくりと廊下を
見回すと、廊下の突き当たり、例の『開かずのドア』の前にソレは立っていた。
・・!!!
私の叫びは、叫びにはならず、息を呑む音だけが廊下に響いた。
しかし私は足がすくみ、逃げることも出来ず、でもソレから目が離せなかった。
ソレは薄汚れた浴衣に身を包んでいる、浴衣の前は無様にはだけ女性用の下着が見えている。
浴衣から伸びている腕、足は異様なまでに痩せ細り、腹だけが異様な感じに膨れている。
その細い腕の一つが顔に伸び、片手がしっかりと口元を抑えている。
目はカッと見開かれ、一瞬白目になったかと思うと、口元を抑えた手の指の間から
吐瀉物が滲み出し、床に滴り落ちてゆく。
びちゃ、・・・・びちゃ、びちゃ・・・びちゃびちゃびちゃ・・・。
それは、床に吐瀉物を撒き散らしながら、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
何こいつ、誰だよ。おい、おいっ、やばい逃げろ!
私の頭の中はいろんな思考がごちゃごちゃになり、体が思うように動かせなくなっていた。
しかし、目だけはソレを見つめている。
不意にソレの目がよりいっそう見開かれたかと思うと、口元を抑えていた手を押し破り
一気に吐瀉物が噴出してきた。
びちゃびちゃ、びびびちゃびちゃぶちゃどちゃどびちゃっ・・・。
その吐瀉物の飛沫が私の顔にかかった様な気がして、ふっと我に返り
ぎぃゃあああああああっ!!!
けたたましい悲鳴をあげてドアを猛烈な勢いで締め、ベッドにもぐりこんだ。
続く