[ノート]
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目が覚めるとそこは身体になじんだベッド。誰かに運ばれたのだろうか。実家に戻っていた。
「何があったの?」
母親はそこにいた。
「何が・・・って」
「何もなかった?」
そう聞いて母親の表情を伺ったが、その夜にあったことを証明する痕跡、血痕や畳を引っ掻く跡など
を母親は見ていない様子であった。
そうだ、ノート・・・
「部屋にノートはなかった?」
尋ねる。
「何もなかったわよ。連絡がないから心配で行ったら倒れているから、心配したわよ。」
私は頭が混乱してきた。夢だったのか?真実なのか?もう一度行って確認する必要がある。
疲れはあるものの身体に異常はみられない。その日はそのまま朝まで自宅で休み、翌日に再度
祖父の家に向かった。今度は母親と一緒だった。
自分が眠っていた、そしてあまりの恐怖に気を失ったその部屋には、ノートや血痕といったものは
見つけることができなかった。布団は母親が片付けたという。
訝しく思いながらも、母親の力を借り、片づけを終えた。

それから半年あまり経って、祖母が死んだ。
寝たきりになってからは私も母親も心のどこかで覚悟はできており、それほど悲しくもなく、
葬儀は祖父の家で行われた。
あの時の奇妙な経験はすっかり忘れていたのだが、祖母の死により、祖父の家に訪れたことにより、
再び思い出してしまった。
ふと、ノートを見せたおばあさんの事を思い出した。
あのおばあさんにノートを見せ、相談したことすっかり忘れてしまっていた私は、おばあさんに
もう一度話をして真偽を確かめたい、そう思わずにはいられなかった。
古くからの付き合いがあるおばあさんだから、もちろん葬儀に来られているだろう。もし来られて
いなくても近所なのだから、訪ねてみてもいい。そう思い姿を探したのだが、どうにも見つからない。
母親に聞いてみる事にした。
「近所に畑仕事していたおばあさんがいたよね、あのおばあさん今日きてないかな?」
すると母親から聞いた言葉は驚くべきことだった。
「ああ、あのおばあさんはもう亡くなったでしょう。何年前だったかね。5年くらい前かね。
 葬式には出られなかったけど、確かそうよ。」
私は何がなんだかわからなくなったが、続けて聴いた言葉はさらに驚くべき事だった。
「近所の人はみんな知ってるはずなんだけど、あのおばあさんは持病があって、自殺だったらしいよ。
 むごい死に方したらしくてね、両方の耳から箸をつっこんで死んでたらしいわ・・・」

修二さんとそのおばあさんの関係はなんであったのか、そのノートはなんであったのか、それは結局
わからないままになりました。
最後に、おばあさんの家もう一度行ってみましたが、その家はすでに取り壊されていました。


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