[山小屋に住み着くモノ]
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「お〜い、お〜〜い。お〜〜〜い。お〜〜〜〜い」と叫ぶ声も長さが増していきそれと同時に再度裏側から
バン!!!!バンッ!!!!と誰かが叩く。
「な、なんなん?これ???誰かが叩きよるん?」とBが半ば泣きながら言うと今度は横側から
バン!!!バン!!!!と音が鳴る。
そこでいきなりドアが開いた。
「おーい、こら。お前らなんしよっとか?お?」と一人の男が立っている。
自分達は全員怖さと目の前の現状が全く理解できずに固まっている。
「おーいって、呼びよるやろうが?お?聞いとんか?のー?」
と捲くし立てる男の手には古びたバットが握られており、それが怖すぎて一言も発せられない。
「なんとか言わんか!!!コラ!!!」と男がバットを扉に殴りつけながら叫ぶので、
「い、いや、BBQしようと思って。来ました・・。知り合いにここの小屋は誰でも使えるって聞いたんで
ここに居ます。」と言うと男は
「あほか?おー?ここは今俺が住んどるんじゃ。」と言う。
「本当にすみませんでした。知らなかったとはいえ、ここが個人の家だとは知らなかったので」と言うと
「個人の家やないけど、俺が先に住んどるんじゃ。誰がつこうて良いっていうたか知らんけどはよ出て行け!」
と叫びながらバットを扉にバンバンと殴りつける。
急いで荷物を纏めてその場から出ようとした時に、その男が
「食いモン持っとるんやったら、置いてけ。肉が黒こげになっとるやろうが!あん?もってぇねぇことしおってからこんボケ」
と囲炉裏の上の焦げた肉を指差して怒鳴り散らす為肉や魚を置いて逃げるように外に出た。
外に出る為にその男の横を通る際、男の目をみてかなり萎縮してしまった。多分白内障なのだろうが方目が白い。
これで見えてるのか?と言うぐらいに。
外に出た後に成すすべなく立ち尽くしていたが、真っ暗闇の怖さで不安になり、皆急いで懐中電灯をつけた。
懐中電灯をどこに照らすべきか分からず、足元に照らし「どうする?」と話をしていると小屋から再度怒鳴り声が聞こえた。
「おい、こら!おぉ?お前ら出て行けって言ったやろうが!聞いとるんか?おい!」と叫んでいる。
何が起きたか分からずに他に足りてない友人が居ないか、誰か小屋に残ってないかを確認するも
その場には友人全員がいる。
「おっまえら、人様をなめとるんか!?あ〜!?」と怒鳴る声は続く。
『女やけって、容赦せんぞ!!!!』 と男が叫んだ瞬間に俺を含めてその場に居た友人数人は腰を落とした。
Aが「え?今なんて言った??」と誰に聞くわけでもなくボソボソと言う。その瞬間に又男の怒鳴り声。
「あー???知らんわー。てめー誰に口答えしよるんか!こら!『女でも俺は殴るぞ!』」と再度はっきりと言った。
俺達は男同士で行っていた。女は一人も連れてきてない。
それにも関わらずあの小屋では男が『女』に向かって怒鳴ってる・・・。
二重の恐怖に足がガクガク震えて、どうすれば良いのかと考える余裕もなく、
動けずにただただその場で友人と目を見合わせてるのみ。多分一人が逃げればそれに続けるのだが
誰も先頭に立って逃げる勇気も無い。
少なくとも俺はさすがに真っ暗闇を先頭に立って照らしながら逃げる勇気は無かった・・・。
ただ、次の言葉が聞こえてさすがに全員一斉に逃げた。
『まゆみぃー!???だれじゃ、ぼけ!しらんわ!!!』と男が言ったから。
最初、名前と思わずに何を言ったか全く分からなかったが言葉の端や流れから頭でゆっくりと
『まゆみ』と言ってるのでは?と理解した瞬間に体がビクッとなり、
『まゆみぃや、いうのは知らんっち言うとろうが!』と再度はっきりと聞こえた瞬間に
全員ほぼ同時に逃げた。