[祖父の予感]
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母はしょうがないから取り敢えず二人で行こうと車で病院に向かいました。

救急窓口に行き病室に行きました。

ですが時既に遅く、本当にドラマのように顔に白い布をかぶされた祖母が横たわってました。布をどかすと祖母は本当に寝てるような顔をしていて、起こせば返事してくれそうな、そんな顔でした。
五分後でしょうか、搬送時担当して頂いた医師が来て話をしてくれました。

「××さんのご家族ですね?せめてご家族が来るまではなんとか持たせたかったんですが、、、丁度ご連絡をして間もなくお亡くなりになりました。」

母は泣き崩れ、自分は涙もでずこれは夢だと現実を否定し続けました。

暫くして泣き崩れていた母が、なぜか自分の試合を心配しはじめ、 

「どうせ家にいてもあんたに出来る事はないよ。今日は大事な公式戦なんでしょ?送るから行きなさい。」
こんな気持ちでどうしろと?と思っていたが、確かに母の言う通りだし、何かしてないと押し潰されそうな状況だった。

顧問にだけ今日の出来事を伝え、チームメイトには伝えず試合に望みました。



正直試合の記憶はありませんでした。奇しくも公式戦初勝利でチームが喜びの中、自分は打ち上げに行かず、車で観戦に来ていたOBに家まで送ってもらいました。

車の中では試合の事はすっかり忘れ祖母との思い出にひたっていましたが、ここにきて朝の祖父の一連の行動に疑問が浮かんできてもいました。

家に着き居間に行くと親戚が集まっていて、隣の寝室には祖母が帰ってきていました。決して起きてはくれない事はやはり、朝の出来事に間違いないことを証明していました。

さて帰宅の途中湧いたその疑問を解消すべく祖父に問いつめようとしましたが、祖父は来客の相手に忙しく、話が出来る雰囲気ではなかったです。(親戚も多く本家の為、お客が途切れる事がありませんでした)

ただ、朝あれだけ取り乱していた祖父なのに来客の方には笑って、気さくに対応していたのが印象的でした。

余談ですが、祖母が事故にあったのは家の真ん前でした。幹線道路に面していて横断歩道も確かに歩かないと近くにないため、信号もない所を渡ろうとしたその時、居眠りをしていた120キロの車に跳ねられました。
当然救急車をよびましたが早朝なのでサイレンを鳴らさなかった結果、すぐそこにあった家族の事故に誰も気付けないでいました。

さて、通夜を翌日に控えなんて名前の風習かは忘れましたが、1日蝋燭の火を絶やさず寝ずの番を任された自分と祖父は祖母を真ん中に川の字に布団をひき、休みながら見張る事に。

ここで自分は、昼抱いた疑問を祖父にぶつけてみました。

「朝、すごい剣幕だったけど何か感じたの?」
「朝起きて散歩行こうとして、婆さんがいないのがおかしかった。今考えれば仕事でいないのは当然なんだがなんでだろうな。
いてもたってもいられなかったんだが、病院から電話があった時、自分の中からなにかがすっと抜けた感じがした。その時、もう間に合わない事がわかってしまった」

続く