[Q君のこと]

私が小学生のときの話です。
コックリさんがはやっていて、友達同士で良くやっていました。
ま、女の子同士なので
「何何ちゃんの好きな人は誰ですか」
「何々君と何々さんは両思いですか」
「先生は今年結婚しますか」
みたいなほとんど恋の質問ばかりしてました。
男子達の間でもコックリさんがはやっていて
やっぱり「誰が好きなのは誰だ?」みたいな事をしてたみたいです。

クラスの中に明らかに一風変わった男の子がいました。
仮にQ君とします。
Q君は私たちのコックリさんに見向きもせず、
何時も黙々と漫画を読んだり
1人でふらりと教室を出て行ったりして
授業の途中でふらっと戻ってきたりしました。
と言っても得に悪い子というわけでもなく
勉強も出来たし、スポーツも結構得意でした。
剣道をやってるらしく小学生の大会で入賞して学校で表彰される事もありました。
男子達も一目置いている存在でした。

そのQ君がある日大きな紙袋を持って登校してきました。
Q君が教室に現れた時、一瞬男子がざわめいた気がします。
「まじかよ」「しゃれんなんねえよ」
みたいな事を言っていました。
Q君は男子のグループをちらっと見て
「放課後だからな」
と言いました。男子のグループは「おぉ」みたいに答えました。

私は、その日授業中もQ君の事が気になって仕方がありませんでした。
(放課後一体何が?)
そんな私の様子を友達のSちゃんが気がついたらしく
「ねえねえTちゃん。どうしたの。Q君の事、見てない?」
と聞かれてしまいました。
「そ、そんな事ないよ」
「怪しいな。Q君って結構カッコいいよねえ」
「ちがうったら」
みたいなやり取り。
「そうだ。Sちゃん。今日放課後予定とかってある?」と私。
「え、ないよ」
「ちょっとさ、話があるんだけど」
「何何?怪しい〜」
とりあえず、私とSちゃんは放課後隠れて男子を観察する事にしました。

Q君が、紙袋を持って男子グループのところに行きました。
「そんじゃ。始めるぞ」
おお、と男子達が答えました。
私とSちゃんは、急いで帰る振りをして、外に出ました。
外から隠れて教室の窓越しに様子を見る事にしました。
「Q君カッコ良いよねえ」とSちゃんが言います。
「あんたQ君の事好きなんじゃない」
そんなことないよ。見たいなやり取りをしつつ中をうかがいます。

Q君は男子達に指示を出して机を並べ始めました。
真ん中に一つ置いて、椅子を3つ並べました。
その周りにぐるっと囲むように机を置きました。

それから紙袋から、何かを取り出しました。
紙のようでした。ちょっと茶色がかっていて古い感じです。
次に白いとっくりを出して机に置きました。
あと硯、筆。
それからQ君は男子二名を指差して椅子に座らせました。
Q君も座りました。三人で筆を持ちました。
「なんだ。コックリさんじゃない」
「Q君もやりたかったんだね。意外だね」
「でも様子が変じゃない?」
そうです。私たちがやるコックリさんとは明らかに雰囲気が違うのです。
男子達はQ君達をぐるっと囲んで、なにやら真剣な表情です。
いつもみたいに笑いも冷やかしもありません。

そうこうしているうちにコックリさんが始まりました。
どんな質問をしているのか聞こえませんでしたが、
教室に緊張が充満している雰囲気でした。

すると突然、教室の窓がガタガタと揺れました。
風?でもそんな強い風吹いていないし。
男子達はものすごい顔をして窓を見ました。
何人かは逃げ出そうとして、ドアに走りました。
その時Q君が何か大きな声で叫びました。
男子達は凍り付いたように固まりました。
また、教室の窓が揺れました。

男子の何人かは、鳴きそうな顔をして走り出しました。
何かから逃げ出すとしている様子でした。
軽くパニック状態になっている様子でした。
「何々?どうしたの」Sちゃんが言いました。
「わ、分かんない」と私。


続く