[カーテンの向こう側]
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その女は、両手を上に上げたり、横に広げたりしながら
その屋上のスペースを右へ左へ行ったり来たりしてた。
横にスペースなんてないんだろうから、この時点でおかしかったんだろうけど
全然気付かなかった。
俺は通報しなきゃ…って考えはまったく浮かばずに、
何故かその光景に見入っちゃったんだよね。ボケーっと。。。
そして、タバコの2本目を付けて、もう一度そっちを見た時に
女が止まってて、明らかにこっちを見てるのに気付いた。
げぇっ!バレた最悪…。って思うと同時くらいに
女が両手を前へならえの感じで俺の方にゆっくり下から上へ上げるように突き出して
地面と平行に上がりきるくらいのところで、前のめりに倒れて行った。
マジで声も出なかった。何か超ゆっくり女が倒れていくのが見えてた。

…と思ったのもつかの間、女がこっちに向かって両手を伸ばしたまま
大きな口を開けてぶわ〜って飛んで来た。
この時の俺のとっさの行動は今思っても奇跡。
すごい速さで出窓ガラスを閉めて、カーテンを引いた。
んで、後からカーテンの上からカギをかけた。
その行動が終わって、2秒後くらいだったと思う。
息をつく間もなく、その窓が ドンドンドン!!!!!!!って三回叩かれた。
しかも、音の大きさや激しさからするに両手で。
マジで半分くらい腰を抜かしながら、手探りでリモコンスイッチで電気つけて
神経ピリピリさせながらしばらく震えてた。
絶対にあの女入ってくる!って思って。
でも、結局、10分経っても20分経っても何もなくて
気分的に落ち着いてきたから、今のは何だった??って思いだして
もう一度見てみようかな…って事になった。
それで何もなければ何か安心して眠れるって思ったんだよね。
でも、カーテンを開けちゃうのは怖かったら、代わりにカーテンの隙間を
片側押さえつつ、ほんのちょっとだけ親指分くらい開いてみた。
そしたら、そこに窓に思い切りギューッってされて、白くなってる指の一部が見えた・・・。

後はもう、そのまま一睡もしないで朝を迎えたよ。
次の朝は思い切って、その窓を開けたけど別に窓に何か手形が残ってるとかはなかった。
でも、俺はその時以来、一年以上、夜にそのカーテンは開けなかったし、
出掛ける時もそのカーテンとリビングのメインのカーテンだけは閉めて出掛ける様になった。
夜に帰った時にそいつが張り付いてたら怖かったから。
結局、その後は家では一度もそういう事に出くわした事はなかったけど
あの時のあの女が何なのか、何の目的で窓にべばりついていたのかは
永遠の謎・・・だろうね。


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