[廃屋]
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その時です。

突如屋敷の中がざわめきだしたのです。
あたり一面から何かが動く『ザワザワザワザワ…』という音が聞こえてきます。
それだけでも私たちはかなりビビったのですが、
さらにしたから『ドドドドドド…』とものすごい音で何かが走る音が聞こえてきます。
しかも、その音は階段へと向かい2階へと上ろうとしてきます。
もうこの時点で涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしていた我々は大慌てで窓から飛び降り、
我先にと塀を乗り越えて逃げました。

その後、友人の一人が足を骨折していたためこの事が親にバレていしまい、
学校と家の両方でかなりこっぴどく怒られました。

結局、この事がキッカケであの廃屋は危険だという事になり、翌年取り壊される事になりました。
私は中1になっていましたが未だにこの廃屋に恐怖を覚えていたため、
父親から「この取り壊しの様子を見て、克服して来い!」といわれ、しぶしぶその様子を見に来ました。
すっかり瓦を取り外された廃屋は、埃防止用の放水ですっかり濡れてちょっと情けないくらいです。
そして、削岩機のような物の付いた大きなショベルカーで破壊されてゆきました。

しかし、私は恐怖を克服するどころかこの事が未だにトラウマになっています。
さらに嫌いなだけだった蜘蛛に恐怖を覚えるようになりました。

それは、壊された廃屋の中から『ザワザワ』と何百、何千という蜘蛛が駆け出してきたからです。
大きいものから小さいものまでわらわらと……。

あんなものはもう、2度と見たくないものです…。

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