[カン、カン]

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おかしい・・・確かに金属のような音で、それもかなり近くで聞こえた。
姉もさっきの音が気になったらしく、「居間を見てみる」と言いました。私も姉と一緒に寝室から出て、
真っ暗な居間の中に入りました。そしてキッチンの近くからそっと居間を見ました。
そこで私達は見てしまったのです。
居間の中央にあるテーブル。いつも私達が食事を取ったり団欒したりするところ。
そのテーブルの上に人が座っているのです。こちらに背を向けているので
顔までは判りません。でも、腰の辺りまで伸びている長い髪の毛、ほっそりとした体格、
身につけている白い浴衣のような着物から、女であるということは判りました。
私はぞっとして姉の方を見ました。姉は私の視線には少しも気付かず、その女に見入っていました。
その女は真っ暗な居間の中で、背筋をまっすぐに伸ばしたままテーブルの上で正座をしているようで、
ぴくりとも動きません。私は恐ろしさのあまり、足をガクガク震わせていました。
声を出してはいけない、もし出せば恐ろしい事になる。その女はこちらには全く振り向く気配もなく、
ただ正座をしながら私達にその白い背中を向けているだけだった。
私はとうとう耐え切れず、「わぁーーーーーっ!!」と大声で何か叫びながら寝室に飛び込んだ。
母を叩き起こし、「居間に人がいる!」と泣き喚いた。
「どうしたの、こんな夜中に」そういう母を引っ張って、居間に連れていった。居間の明りを付けると、
姉がテーブルの側に立っていた。さっきの女はどこにも居ません。テーブルの上もきちんと
片付けられていて何もありません。しかしそこにいた姉の目は虚ろでした。今でもはっきりと
その時の姉の表情を覚えています。私と違って、彼女は何かに怯えている様子は微塵もなく、
テーブルの上だけをじっと見ていたのです。

続く