[哀しい初恋]
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その後、大学へ進む為に勉強に励む俺。
深夜ラジオをつけると不意に聞こえてくる女の声。
ラジオのDJの声に混じり「弘ちゃん、苦しいよ」と声が聞こえる。
ベッドで寝てると金縛りとともに聞こえる赤ちゃんの泣き声。
ふと二階自室の窓を見ると女の姿があったり、携帯アラームが誤作動したり。
こんな事が数か月続き、俺もダウン。
寺に行き坊さんに祓って貰うが、気休めにしかならないと言われる。
大学は失敗、予備校に通いはじめそこで知り合った女の子を好きになり付き合う。が、彼女にも影響が出た。寝てると女の泣き声が毎晩のように聞こえ、付き合うどころでは無くなってしまい別れる。
家は不審火が二回、霊障らしき音なんかは四六時中。
さすがに参ってしまい一度加奈の墓参りに行くことにした。
線香を供え、手を併せ加奈の冥福を祈る。
その時、住職がやって来て俺にこう言った。
君はこのままでは連れて行かれるかも知れない。東京の○川市にある○○寺の○○さんを尋ねなさい。きっと力になってくれるから。
と言ってくれた。

翌日東京に戻り紹介された寺を尋ねる。
初老の坊さんが俺を見るやいなやかなり強引に手を引いて本堂へ連れていかれた。
そこで作務衣みたいなのに着替えさせられ頭を剃られ、経を読み上げる。
いきなりの展開にビビりながらも坊さんが真剣なのでそれほど事態は深刻なのだと悟り言われるままにする。
一日目は昼から夜の9時位までずっとそこでお経をあげてもらう。
夜は簡素な食事を頂き、今夜は本堂より一歩も出るなと言われた。

夜中、二時位だと思うが本堂の戸が突如ドンドンと叩かれる。
仏像が揺れる程尋常じゃない叩き方で外から赤ん坊の泣き声まで聞こえる。
恐くてガタガタ震え布団をかぶって去るのを待った。
4時頃までそれは続き、5時に坊さんが来てくれた。
俺は夜中の事を尋ねたが、真剣な顔で何か考え込み何も教えてくれなかった。
6時頃、夏休みだからか近所の子がラジオ体操に来て坊さんと参加する。
ありえないくらい日常の空気で少しほっとした・・・。
午前中境内の掃除を手伝い、本堂を水拭きする。
午後から読経を受け、また夜が来た。
坊さんに何があっても戸を開けてはならない。例え泣き縋られても決して開けるなと言われる。
眠りについたと同時に昨晩と同じようにドンドンと音がはじまった。
暫らくするとドサっと何か崩れるような音がして聞き覚えのある声が聞こえた。

『なんで弘ちゃん開けてくれないの?』

加奈だ・・・・。確かに加奈の声がする。
膝がガクガク震え心臓がバクバクいってるのがわかる。
『あけてよ・・さむいよ・・』
耳を塞ぐが聞こえる声。気がどうにかなりそうだった。
朝が近づくにつれ、声は聞こえなくなった。
昨日と同じく5時頃に坊さんが来てくれた。
緊張から解放されたが恐怖のあまり恥ずかしながら小便もらしてた・・・。

続く