[哀しい初恋]
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高校に通い新しい生活がはじまると加奈の事は次第に薄らいで行った。それでも加奈と最後に話した内容は時々夢に出た。
高校三年の時に中学時代の友人から加奈の訃報を聞いた。自殺だったそうだ。自宅で首を吊ったらしい。

俺はその日の内に飛行機に乗り加奈の通夜に出た。
地元でも名家だった加奈の家だが、参列者は少なかった。
受け付けで名簿に名前を書くと係の人に焼香が終わったら親族の部屋に行くように言われた。
涙が溢れたが、なんとか焼香を終え、親族の部屋へ。
部屋には加奈の親父さんと年の離れた姉さんが居た。
そこで俺に語られた事は耳を疑うような悲しく恐ろしい話だった。
憔悴した親父さんの話。
加奈は俺と図書室で会った日の帰りに偶然車で来ていた不良四人に絡まれ車に乗せられ朝方までレイプされたらしい。
家に戻ってきた時は全裸で身も心もボロボロの状態だった。言動もおかしくケタケタと笑っていた。
噂が立つといけないので県外の病院にて治療を受けた。精神的なストレスにより痴呆のようになってしまい、さらに検査の結果妊娠も判明。
堕ろそうとしても「これは弘ちゃんの子!」と泣き叫び手に負えず結局堕胎出来ない時期まで来てしまった。

結局男の子を出産し、名前は「弘」になった。加奈がそう呼び続けていたので・・・。
加奈は出産後、自宅に戻し奥座敷で療養していた。
この頃はすでに母親も気がふれてしまい入院してしまった。
加奈の面倒は親父さんが見ていたが加奈は子供返りしており、まともな会話は出来なかった。
時々、我に帰ったような素振りを見せたがその都度自殺未遂を繰り返し、施設に入院させようとした矢先、とうとう首を吊ってしまった。
赤ちゃんはお姉さん夫妻が引き取ったがダウン症らしい・・・

親父さんも話が終わると泣き崩れてしまい、お姉さんは俺にこんな話をしてしまい申し訳無かったと言い俺を返した。

俺はあの日一緒に学校まで引き返さなかった自分を呪う気持ちと涙しか出なかった。

だが、話はこれで終わらない。
これより数年に渡り俺の身の周りに不可思議な事が起こるようになったんだ。

続く