[噂]
前頁

暗くなった時に一瞬見えたものなど、到底信じるに値しないが
俺たちが見てハッキリさせればいいだろう
どうせそんな話、あるわけないんだ

見たと言い張るS(仮名)がその時行動したように
俺たちも暗くなるまで話しながら時間を潰してた
7時をまわると外も大分暗くなり、もう頃合だろうと思い校門へ向かった

門をくぐるまであと4,5メートルって時、右側の門柱が反射したように光った
みんなが振り向いた先にある、東校舎の3階の壁

確かに、あった
不明瞭だが、見える、O先生の顔

それを目にした2人は息を飲んだ、が俺はその時ある言葉が浮かんだ
「あれは本物じゃ、ない」

何故そう感じたのかはわからない
大体「本物」じゃないって、何をもってその区別をつけるのか
どうしようもなく気になったが、後の2人が泣きそうだったので
その場は逃げるように帰った

次の日の夜、俺はまた暗くなった学校のロビーにいた
昨日感じた違和感の正体をどうしても知りたかった
このロビーから南へ20メートルほど歩くと、校門をくぐることになる
ひとつ、息を吐いて、南へ歩いた
ゆっくりと校門に近づいていく
あと15メートル
あと10メートル
そして、あと5メートル
昨日のように、右の門柱が光った
そう、右側が、だ

俺の進行方向右側は西だ
門柱の東西の間は広い
つまり反射した光の光源は西にあるはずだ
だが、あの顔が見えたのは東校舎
「不明瞭な」顔が東校舎に
西校舎の「何か」が不完全な形で東校舎に・・・
西校舎に走り出した

ぼやけた顔が出た3階の壁の真正面
生前の彼女がよくみんなと話してた美術室
そこに、いた
以前と変わらず、優しい雰囲気のO先生が
先生は、俺に、微笑んだ

そこから先は記憶がない

気がついたのは朝になってからだった
出勤してきた養護教諭が、保健室で眠る俺を発見した
俺はいつ保健室に来たんだ?
美術室でのあの姿は鮮明に覚えている
自分の足でここまで来たなどとは考えられない

そこで思い出した
O先生は優しかった
だから体調の悪いやつによく
「保健室に行ってきなさい」
って言ってたことを


次の話

Part167menu
top