[鬼とのチャンネル]
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1日2日ならどうでもいいが、毎晩毎晩出てこられるとさすがに滅入る
しかも工夫もなく同じこと言いやがって
2週間も経つとみんな心配してくるんだけど
俺自身、解決策が見つからないからどうしようもなかった
ちなみにその間、しょっちゅう見えてた霊(っぽいやつ)も
全く見なくなった

1月半ぐらいたって、ジーサマが逝っちまった
でっかい病院の1室で死んだんだけど、その今際に立ち会った時、聞こえたんだ
「今回はこれで許してやる」って
直感で、あの鬼が言ったんだなって思った
それっきり鬼はおろか、それまで見えてたモノも一切見なくなった

で、それからは霊のことも忘れて生きてたんだけど
先週、ジーサマが死ぬ前によく話してた霊能者と話す機会があった
その人と会うのはジーサマが死ぬ前だからほんとに久しぶりだった

歳の離れた人だったから喋るネタもなかったんだけど
ちょうど近くで火事があったみたいですげえ煙が出てたんだ
それを見てふっと思い出してあの当時見た鬼の話をしてみた
そしたらその霊能者のオッサン、目ん玉飛び出そうな顔して
「その話教えてくれ。ただしここではするな。車に乗れ」
とかぬかしやがった
で、車で1時間近く走って着いたのが、寺、だった

そこで初めて聞いたんだけどそのオッサン、
今は霊能者として活躍(w)してるけど、若い時にその寺に修行してたらしい
お祓いなんかもよくしてるらしいけど俺はよく聞いてなかった
なんつーか、その寺にいるだけで異常に吐き気がするんだよ
ぶっちゃけすぐに回れ右して帰りたかったけど、
オッサン、有無を言わさずに中に入らせるんだよ

で、入ったのは講堂(?)の奥にあるすげえ狭い部屋だった
立って5人ぐらいしか入れないような部屋の壁に
「東清(? 達筆でよく読めなかった)」
みたいな「方角+清(みたいな字)」が書かれたでかい札が貼ってあった
その部屋に入ると吐き気はきれいになくなったよ
でもやっぱり空気は異常だった

オッサンが北、俺が南の方角(札の)に座って
俺はあの時の話をオッサンの質問に答えながら話した
で、話し終わった後、オッサンが
「鬼は本来、全ての悪い生き物の上位にいるやつだ。
だからそんな上等なやつはちゃんと修行を受けたやつか、
普通の人間とはほぼ全くチャンネルの違う人間にしか見えない。
しかも鬼がとりつくのは大抵が人間じゃない。
知能が低くて、野性の高い動物がよくとりつかれる。
そしてあの札も、上等っちゃあ上等だが、せいぜいが
紙で制御できるモノしか吸収できない。
つまり、鬼が出てくるなんて、絶対に、あってはならないことなんだ」
って言った。
が、見えたり、つかれたもんはしょーがなくね?

そっからなんか有難いっぽい話を延々とされたが、
結局、オッサンの結論は
「お前は、おかしい。異常だ」ってことだった

俺は、あれ以来鬼どころか霊も見てないし、
鬼のことなんか思い出すこともなかった
誰かに話したのもあれ以来だって言ったら
オッサンの顔が蒼白になった
俺がびびるくらいに

続く