[苦焼女]
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翌日(その出来事から数時間後)。
何とか帰ってもらえて、ぐっすり眠ってしまい、寝坊をしてしまいました。
多分、何か火か何かで亡くなったままの方だと思って調べてみました。
もしかして、そんな状態で来るんだったら、知り合いかと思ったり。
一刻も早く、見つけてあげたいのですが新聞朝刊(前日の夕刊も)を捜してもそのような記事がありませんでした。
疲れていたせいだ、と気持ちを切り替えて外出しようとすると、鼻血がたれてきてしまったんです。
かがみこんでティッシュを取ろうとすると、急に動けなくなって、意識がはっきりしているのに手足を縛られたようにまったく動かないんです。
内側から外側にかけて、力をかけようとしても全然ぴくりともしませんでした。
臭いはしません。
鼻血が出て、血の臭いしかしませんでした。

目も開かずじまいで、黙っていると。
ふっと何か熱い物が左腕に当たりました。
火傷のようなものすごい激痛が走りました。
ものすごく熱くて、泣き叫びたくなって、はらいたいのに、それがくっついて離れないんです。
どうやら、夜来た女の方が居るようなのです。

臭いを嫌がられる、それと目を開けられると醜いから、その二つの理由のようでした。

自分でやったんじゃない、誰かに火をつけられて苦しかった。
とにかく、苦しい。痛い。
さっきは、距離があったから上手くいかなかった。

言葉では無い何かがジワジワ左腕を通して伝わってきました。
涙がボロボロこぼれて、次の瞬間女性がふっと消えてしまいました。
それと同時に、金縛りみたいなのも鼻血もおさまりました。
助けることも出来ず、消えてしまった女性が一刻も早く「あっちの人」になれることを願っています。

続く