[ツンバイさん]
『ツンバイさん』 
思い出したことを打ち込んでいたらこんなに長くなってしまった。ご容赦を。 
これは俺が小学5年生だった時の話だ。 
当時、俺の通っていた学校では『心霊写真』を撮影するのが流行っており、 
俺のクラスの何人かも使い捨てカメラを持って、 
放課後の校舎で幽霊が出そうなところを撮影しながら探索する遊びをよくしていた。 
もちろん何処を撮っても心霊写真なんか撮れないし、 
放課後の校舎をいつまでもウロウロしていたって先生に怒られるだけなので、 
単に怖いもの見たさというか、スリルを友達と共有したかったのだと思う。 
そんな遊びも時が経つにつれて自然と廃れていったのだが、 
俺と2歳年下だった弟(同じ学校の3年)は写真撮影の遊びを続けていた。 
そんなある日、いつものように放課後の校内を走り回っていると、 
体育館のほうから「ゴットーン」と何かが床に落ちて反響する音が聞えた。 
誰かがバスケでもやってるのかと見に行ってみると、誰もいない。 
しかし、体育館のステージの前に緑色の「一輪車」が一台放置されていた。 
俺も弟も、(誰かが遊んだまま片づけなかったのだろう)と思った。 
一輪車で遊んで放置したまま帰る生徒も結構いたし、特別不思議な光景ではなかった。 
ところが、その一輪車はつい今、乗り捨てたかのように「車輪が惰力で僅かに回っていた」 
おかしいなと思って、いつも放課後に心霊写真遊びしていた友達のTの仕業ではないかと 
ステージの裏に向かって名前を呼んでみたが、応答はない。 
弟が誰か隠れていないか調べてみたが、ステージの裏はおろか、体育館の倉庫にも誰もいなかった。 
放課後なので体育館と校舎を繋ぐ通路以外は扉にすべて鍵がかかっていたし、俺は急に気味が悪くなって弟と校舎に戻った。 
俺が走り出すと弟もビビりだして、二人でランドセルを取りに5年生の教室へ走ったのだが、 
便所に行きたくなってしまった俺は、教室の前にあるトイレに弟を連れて入った。 
弟は小便がしたいわけではなかったが、一人では怖いので用が済むまで俺の後ろに立たせた。 
その時、突然「大」の個室の中で「ゴットン!」という大きな音がし、もう完全に飛び上がるくらい二人で驚いて 
弟は真っ先にトイレから逃げ出してしまった。今でも覚えているが、俺は気が動転して、 
小便の途中だったにも関わらず、ズボンを上げてトイレを出ると、ランドセル引っ掴んで風のように走って帰った。 
そんな怖い思いをしても、子供ってのは不思議なもので、一晩経って翌日になるとケロっと何事もなかったように登校できる。 
俺も弟も朝になると昨日の恐怖よりも、放課後にあの不思議な現象の正体を解明してやろうと思っていた。 
だが、教室に入ってみると、クラスの連中の雰囲気がおかしい。 
いつもなら朝からギャーギャー騒ぎ立てているのに、ほとんど着席してこじんまりとしている。 
原因は「黒板」にあった。 
「きのう、放課後に一輪車であそんでかたづけなかった人がいます。 
あそんでかたづけなかった人は、休み時間に○○先生に〜〜」 
とか何とかという内容が書かれていたのを覚えている。 
担任は女の先生だったが、清掃などにはうるさい先生だったので、 
朝からクラスが辛気臭い雰囲気だったわけ。 
俺は身に覚えがあるというか、昨日の放課後に体育館に放置された一輪車を見ているので、 
100%あの一輪車のことだと思って、自分には関係ないけどビクビクしていた。 
続く