[落ちた日と発見された日]

霊体験という訳ではないのだが。まとめを見て面白そうだったので書き込ませてもらいます。ちょっと長くなりそうです
私は十歳のころから霊らしき物を見ることが出来た。
 過去形にしたのは、最近になって酷く曖昧になってしまったからである。
 頭のない犬。人間のような表情をして笑うネコ。能面のような顔をしながら、風呂場の天井でこちらを見下ろしている髪の長い女。
 そして、今私がパソコンを触っている部屋で走り回っている和服の少女。
 よくテレビや本で見る「幽霊」や「おばけ」そのものだった。
 しかし、それが本当に幽霊であったかというと、少し疑わしい。今になって思えば、麻薬に嵌った人が見るような幻覚のようなものだったかもしれない。

 では本題に移ろうと思う。
 私が丁度、十歳の誕生日を迎える前の日のことである。学校ではある噂話が飛び交っていた。
 その内容は「霊を見る方法」当時、田舎の学校だったため、私のクラスは八人しか居なかった。当然、そういう噂話は嫌でも私の耳にも飛び込んできた。
 そして、その日の放課後。私の親友のT君が「一緒にやってみぃへん?」と話を持ちかけてきたのだ。
 私は出された宿題のことを気にしながらも、渋々頷いた。今にして思うと、これが私にとっての最初の間違えだったのだろう。

 霊を見る方法を簡単に説明すると
まず笹餅を腰に下げ河原に行って、黄金色になって首を垂れているススキをうちの村に伝わる童歌を歌いながら、一本ずつ折っていくのである。
手が一杯になったら、次にその束を川の水に浸し、それで注連縄を作り、山を登り奉ってある地蔵の前に置く。という、簡素なもの。
 そして、それを実行するのは九歳までの子供という縛りも付け加えられていた。
 
T君は二月ほど前に誕生日は終えているため、これをすることは出来ない。
 仕方がないので、T君に実家の笹餅を拝借して貰い、私が一人で笹を折ることにした。
 とは言え、石の上で待ってくれているT君が何度も声をかけてくれていたので、不安感はそれほど無かった。
「もし、本当にユーレイ見えたら皆に自慢しよか」
「俺もユーレイ見えたりしたら、どうしよ」
 まあ、そんな他愛の無い話をしているうちに、いつの間にか手いっぱいになっていた。
 次は水に浸して注連縄なのだが、祖父には少ししか教えて貰っていなかったため、不恰好なものになってしまった。
「まあ、ええんと違う? どうせ、噂やし」
 そういって笑うT君の顔は、夕焼けで真っ赤に染まって不気味だったのを今でも覚えている。
 だが、私も流石に夜になるまでには、家に帰りたかった。というより、叱られるのが怖かったのだろう。

 私はT君と別れ、急いで件の山に登り、そこに奉ってある地蔵が奉ってある祠の前に、不恰好な注連縄を置いた。
 何処からか、聞いたことの無い歌が聞こえ、そちらに足を進めた。

ここで私の記憶は途切れ、次に目を覚ましたときには、病院の個室だった。
 後で知った話では、その後に私の両親が夜になっても帰ってこない私のことが気になり、警察に電話をしたそうだ。
 そして、五日後になってようやく、その山の中の洞窟の中で眠っている私を見つけたらしい。
 だが、その時に父が暴れた私に腕を噛まれ、凄い力で肉を裂かれたという。
 ちなみにわたしの持っていた注連縄も無く、腰に下げていた笹餅も無くなっていたらしい。

続く