[ウエディングドレスの女]
中学の頃、塾の帰り道の話です。 
塾が終わる時間が大体夜10時過ぎでした。川沿いの土手上のサイクリングコースは 
人けもなく周りに民家もない夜はちょっと怖い道なのですが、近道なのでそこを通ってました。 
その日はいつもより遅くなり、11時頃だったと思います。いつものように 
自転車で土手の道を走っていると、土手下に白い服(ドレスみたいな)を着た女性が 
体育座りをして川を眺めているのが見えました。大人になった今思うとどう考えても絶対近づきたくない不審者 
なのですが当時は中学生。好奇心と下心で自転車を止めて近づいてました。 
「どうしたんですか?」と聞くも、聞こえてないのか無視したのか女性は川を眺めたままです。 
俺もちょっとムッとしてちょっと大きな声で「どうしたんですか!?」と聞くと女性の振り返った顔を見て 
ギョッとしました。片目(左目)が無い(しかも黒く腫れてる)口が右頬の下にずれて付いていました。 
着ていた白い服はウェディングドレスのようでした。振り返ると立ち上がってこっちに向かってきたので 
咄嗟に逃げなきゃと思い、急いで自転車に乗りました。必死に自転車を漕いで後ろをむくと両手でスカートを 
たくし上げタッタッタッタッタと走って凄い形相で追ってくる。追っかけてくる走りが早いのと 
自転車のスピードがのりきれてない内に荷台を捉まれ倒されてしまいました。尻が地面に付いた状態(格闘技でいうガードポジション 
からちょっと起き上がった状態)の俺に更に女は向かってきたので咄嗟の防衛本能から相手に足を向けていました。 
近づかせまいと向けてた足が偶然相手の体に当たり、蹴りがヒットしたみたいになりました。(足が当たった時点で女が幽霊の類じゃないと思った) 
女性はよろけて倒れそうになったがすぐ起き上がりました。それまで恐怖で声もでなかったのだが 
相手が生身の人間だと分かり安心したのか気が付くと大声で「お母さん助けて!」と叫んでいました。 
(今考えるとなぜお母さんなのかわからず俺はマザコンじゃない) 
大声で叫ぶとなぜかその女性は急に逃げていきました。訳もわからないがとりあえず助かったとホットしたのを覚えています。 
次の日学校で友人に昨夜の事を話したら、怖い怖いと隣のクラスにまで 
話は広がり、その女を隣町で見たことあるという人がでてきました。 
その人がいうには普通に昼街中を歩いていたみたいですが、(やっぱりウェディングドレス) 
顔は片目に毛みたいのが生えててみえなくなっていて口は曲がって付いてたというので 
その女性で間違いないです。普通に実在してました。その人に何があったのか今どうしてるのかは未だにわかりません。 
今思えば実は可哀相な人だったのかもと思うと同時にやはりゾッとします。