[おささる像の謎]

日光東照宮神厩舎は、厩舎を囲む八枚の猿の浮彫で有名であり、
中でも、「みざる、いわざる、きかざる」の「三猿」の木彫が名高い。
しかし、厩舎内の北面に彫られたもうひとつの「三猿」、
「みざる、いわざる、おささる(をささる)」
の彫像については、一部の社殿関係者が知るのみで、
一般にはほとんど知られておらず、また公開もされていない。

この彫像は「三猿」といっても、外見を窺うことができるのは、
「みざる、いわざる」の二猿のみで、
残る「おささる」は、上から厚く漆喰で塗り固められ、その姿を見ることはできない。
社伝によると、「おささる」像は神厩舎の建立当初から漆喰によって覆われていたらしく、
像の姿形についての記載は残っていない。
また、「おささる」像が、漆喰で覆い隠されている理由も記されていない。

安政の大地震の折、「おささる」像を覆う漆喰の一部が剥がれ落ちたことがあった。
神主達は像の姿を眺めることを忌み嫌い、厩舎に足を踏み入れようとせず、
その修復を社殿に出入りしていた馬子に命じた。
長押に梯子をかけ、漆喰を塗り直した馬子は、翌日、飼葉桶に頭を突っ込み死んでいたという。

以上、「おささる像の謎」。


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