[電話を待つ石塚]
トゥルルルルルル… 
トゥルルルルルル… 
なかなか出ないな、槌田のヤツ何してるんだ… 
二週間前。 
石塚は電話を待っていた。 
槌田からの電話、友人の槌田からの電話を待っていた。 
携帯電話は電源が入ったまま、じっと石塚の顔を見上げている。 
電話は石塚を待っていた。 
ひたひたとそれは近づく、電波は忍び寄る。 
トゥルルルルルル… 
トゥルルルルルル… 
電話は鳴り響く、石塚は電話を取る、電話は石塚に取られる。 
「おい、遅いじゃ…!」 
石塚は気づく、電話は知っている。 
青白い画面に浮かび上がるのは「非通知」の文字。槌田ではない。 
石塚は慌てて電話を切ろうと思う。ボタンを押そうと思う。 
電話の相手は許さない。 
電話の相手は語りかける。 
「 暗い、暗い、暗い、暗い、暗い 」 
石塚から血の気が引いた。 
この電話は普通のものではないと気づいた。 
石塚は電話を切った。 
同時に石塚の手首が切れた。 
石塚は痛みから叫んだ。 
傷口は滴る血で叫んだ。 
一週間前。 
石塚は電話を待っていた。 
槌田からの電話を待っていた。 
手首には包帯、滲むような痛みがまだ続いている。 
トゥルルルルルル… 
トゥルルルルルル… 
電話が鳴った、石塚はそれを取った、ボタンを押してから気づいた。 
また「非通知」の文字。 
急いで切ろうとする、だが電話の相手は許さない。 
「 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い 」 
石塚は電話を切った。 
同時に石塚の足首が切れた。 
石塚は痛みから叫んだ。 
傷口は滴る血で叫んだ。