[まとわり憑く女]
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条件反射的にドアノブを押さえつける。「絶対にいれねーぞ」と心に思いながら、
今思うと既に巻き込まれていたことも分からずに、ひたすらドアを押さえつけた。

「エーコです。あけてよー」

!?エーコだった。
じゃあ…さっき部屋に入った、タイ子ともう一人は誰だ?ほかにもう一人がこの
家にいる!俺は気が動転し、エーコの腕をつかみ無理やり抱き寄せた。
Sが土足のままリビングに走る!「こぉぉぉのやろーー!」

鍵など気にしている暇もなく、エーコを連れて慌ててリビングに向かうと、そこには
ソファに座ったタイ子を後ろから押さえつけていた、そう、「女」がいた。

その女は多分50歳前後だと思う。ただ、なんとなく見覚えのある顔だった。
無表情のそのおばさんは、タイ子を押さえつけながら俺ら?と言うよりSをずっと
見つめていた。
何秒くらい互いに見つめあってただろう…俺はその間ひたすらこの女のことを考え
ていた。そもそも、タイの店でSに女が憑いてるって騒いでた時も、俺は女を既に
「オバハン」だと決め付けていたし、今、目の前にいるそのおばさんはまさしく俺が
思い描いていたとおりの顔だった。ん?じゃあ俺も関係しているのか?この女は
いったい誰だ?よく考えろ、だれだ?どいつだ?

Sがゆっくりと話し始めた。

「あんたは俺に何をしたいんだ?喋れるか?俺は落ち着いてるぞ。俺の人生
27年間、物心ついたときからあんたの顔は知ってる。体はあるのか?生きてる
のか?今日ではっきりさせよう。憑いてるのは俺個人か?家系か?」

エーコがタイ語でタイ子に話しかけるが、なんら反応が無い…

俺はずっと考えてた。こいつの顔をどこで見たのか?なぜ俺も知っているのか?
どこで見たのか…!思いだした!ん?エプロン姿?作業着?なんだかたくさん
思い出してきた。

やっと分かった。そう、エプロン姿も作業着姿も見覚えがあるはずだ。だって…

「T、おまえも知ってるはずだ。思い出したか?そうだよ、この女は俺らが通って
いた保育園の先生だ…お前は途中から幼稚園に行ったけどな、俺はずっと
その保育園にいたんだ。言ったはずだ、知ってるだろ?俺のティムポと尻と背中
にスゲー傷がある事、保育園でこいつにやられたんだ。人間の体で入りやすい
箇所3箇所だからな。事件後、園長と一緒に家にあやまりに来たとき、うちの
じいちゃんはすげー顔してたぜ。分かるんだろうよ、なんせ拝み屋だからな。」

続く