[トンネルでの攻防]
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何故かはわからないのですが、トンネルからだいぶ離れるまで涙は止まりませんでした。 
涙が止まるまで、背中にはずっと悪寒にも似た寒気が走っていましたが、 
治まるまでその男の子は袖を引いて一緒に歩いていてくれました。 
そう言えば、その男の子は友達や、同じ学校の人達には見えていなかったみたいです。 
同じ班の友達が心配してくれていたのですが、その時の私は泣くばかりで何も言えませんでした。 
寒気が通り過ぎた後、男の子も消えてしまったのですが、 
私はあのトンネルに帰ったんだな・・・そう思いました。 
その後は無事に遠足を終え、バスで帰りました。 
帰りのバスの中で、霊感があると言っていた友達が・・・(私の前の席に座っていたのですが) 
「あの子が助けてくれたんだ、良かったね」 
と急に声をかけ言ってきて、さらに。 
「あの子も一緒に帰らせてあげたかったね、きっともう随分と前からあそこにいるんだよ。○○(私の名前)みたいな子を、ずっと前から助けてあげているんだろね」 
「・・・・・・誰から?」 
私はなんとなく分かっていましたが、聞いた。 
「あの般若のような顔をした女からだよ・・・連れて行きたかったみたいだよ、あんたの事」 
「・・・えっ・・・!?」 
その言葉を聞いて、私は口を開けて暫し放心状態になっていました。 
霊感の強い彼女にはしっかりと見えていたらしいです。 
般若のような恐ろしい形相の女が、物欲しそうに私を見つめながら、後を追いかけていた姿を・・・ 
暫くしたら諦めたようで、トンネルに帰っていったそうです。 
きっと男の子が消えた時の事だと思います。 
あの男の子が何者何かは分かりません、調べる気もありません。 
ですが、その日以来そのトンネルを通っても、男の子もあの女も見ることが出来ませんでした。 
あの女には出会いたくないですが、男の子だけには、どうしても会いたかったです。 
会ってお礼が言いたかった。 
その時以外、私には霊的出会いは何もありません。 
でももう一度だけ・・・もう一度だけで良いので、あの子に会いたいです・・・。