[猫を使った儀式]前頁

そういった妄想も膨らみつつ、宿の方へと向かった。
まず初めにしたのは聞き込み。
「平家」「三辻」「熊王」など色々な事を古い日本家屋へ行っては聞き込んだ。
大体の老人の話では、天皇家の血筋だとか平家の偉い人だかが四国に流れてきた。
という事。
最後と言うべきか、寧ろ満たされた自分の好奇心が最後にしたのか、ともかく最後に
訪れた家の方はこう話した。(方言の再現は不可能ですw)

爺「好きな人もおるんじゃのぉ」
婆「勉強の為だしいいかも知れませんね」
爺「私も昔の年寄りに聞いた話だけしか言えんけどいいか?」

そんな事を言われて「駄目です」などとは当然言えるわけもなく、
「お願いします」と丁寧に頭を下げた。

爺は語る
「昔平家の落ち武者がある日猫を連れて落ちてきた。
自分が言うにはとても偉いんだと言うこと。
なんでも猫を使ってある儀式がしたいと言いだした。」

婆「不老不死じゃな。」

爺はそういう変な言い方するなと婆に言って舌打ちをしながらこちらに向きなおした。
続いて爺
「山やら森の名前で分かるかも知れんが昔は随分とそういう事が実験に近い形で
行われてた。ワシのじじいの代でもそういう事があったと聞いておる。
しかもその時使われていたのは人間、今では差別になるんだが、
分かりやすく言えば部落じゃな。そういう土地柄を利用しつつやっていたと聞いておる」

僕は聞き返す
「人体実験のようなものですか?」

爺「昔はそういうこともあったという話だ。あんた間引きや姥捨てというのを知っとるか?」
静かに頷く自分の内心は『うひょひょひょ、キタキタキタキタキターーーー』という感じだった。
爺「そういう対象の人間が『使われた』んだな。しかし今でも猫に関しては神聖視す
る社会もある。あんた今日は絵金に行くのかね?」

僕はただ単純にうなずく作業を2,3度繰り返した。

爺「あの辺りには一部だが、いわゆる部落っつーもんがある。猫だけは決して殺しては
いかんぞもし間違って何かの拍子に殺してしまったら、何も言わずにすぐ逃げなさい。
今でも何かといい噂はない社会だから。年寄りの間でだけだがな。」

「わしが話せるのはこのぐらいかの。」とその話を締めた。

僕はそのお爺さんとお婆さんに深々と頭を下げてお礼を言いつつ、東京土産ですと
東京ばななを渡して赤岡に向かった。
向かう途中に考えた。
実はあの爺さんは肝心の儀式については何も話してくれなかった。
方言だからかもしれないが、最後に「ワシが話せるのはこのぐらい」と言った。
それ以上は話せなかったのだろうか?
妄想が大好きな僕は監視なんかがあり話せないとか、近所の人に後で色々と言われるのが
怖くてそこで止めたなど色々考えながら赤岡に向かった。
当然あんな話をされた後なので、赤岡での聞き込みはとてもじゃないが出来ず、
おとなしく予約した宿に車を走らせた。
その夜、絵金は静かな祭りで皆がたまに見れる絵金を楽しみにしていたという表情が
うっすらと蝋燭の火で灯され、皆が楽しんでいる様をまるで第三者のように見つめながら
絵を楽しんだ。

祭りは終わり次の朝には宿を出た。
宿を出るときにはおかみさんが外まで見送ってくれた。
2,3定型文とも取れる会話をしつつ一路空港まで向かうことにした。

空港に向かう途中の話、旅館から出てまだ10分程度の場所。
広場のような場所で車を止めて道路の反対側にある自動販売機で地図を確認していた。
要は道に迷ってコーヒーを飲んでいたのである。
その辺りは細かい道がとても多く、空港方面に出る道路に出るためには
少々遠回りをしなくてはいけなかった。
自動販売機の裏に森に向かってるベンチに腰掛け、コーヒーを飲みながら地図
と格闘していると、ふと『キキーッ!』という車の緊急停車といった感じの音が聞こえてきた。
車はそのまますぐに発進した音がしたので、そのまま気にせず地図と睨めっこをしてたわけだ。

続く