[記憶喪失の女の子]

数年前レンタルビデオ屋でバイトしてた時の話です。
当時私は大学に通いながら深夜の時間にバイトしてました。
店長に新しい子が今日から来るからいろいろお世話お願いね。
と言われて、いつも深夜の時間人手不足で一人でやってて
やっと寂しい時間が終わるなーなんて思ってました。

「こんばんは。今日からお願いします。」
私より背丈が高くて肩にちょっと髪がかかってる女の子でした。
「お願いしますー。深夜に女の子がバイトするなんて珍しいですね。」
「自給に惹かれちゃって…。」
なんて他愛のない話を数日してました。
バイトの時間人もあんまり来なくて暇だったからよく話してました。
いつしか付き合うようになって彼女が私に言ってきました。

「私、一年前まで病院にいたんだ。道端に倒れてたらしいんだけど
記憶がないの。子供の頃の記憶も。なんで倒れてたのかも。」
「病院で目が覚めたときにはいままでの記憶がなかったってこと?」
「うん。名前はわかったんだけど、何処に住んでたのかも
家族のことも分かんないの…。」
彼女は泣きそうになっていました。
「そうなんだ…。警察とかには言ってないの?」
「病院に居たとき進められたけれど、何故かわかんないんだけどね
探す気になれないんだ。もちろん今も。」
私は家族に会いたくない過去でもあったのかなーなんて思っていました。
「まぁ、楽しい思い出はこれから作っていってさ、
家族のこととかは会いたくなったら言えばいいんじゃないかな。」
空気が重かったので私は軽く流して別の話題にすぐ変えました。

ある日一緒に家で寝てた時、彼女が突然起き上がりました。
「どうしたの?」
「なんか夢?っていうか頭に浮かんだ。」
「何が?」
「昔のこと、病院にいたときより前のこと。」
「ほんと?何が浮かんだの?」
私は楽しみな顔で聞きました。
「よくわかんないけど、山の中でね私走ってるの。
私の前にも誰かが走ってて、私その人のこと追いかけてるのかな?

それでね私の前に走ってた人が突然倒れたの。
そこで頭の中がぷちんって切れて夢みたいなのが終わったの。」
「なんかよくわからんな…。何処の山とかはわかんないよね?」
「わかんないよ…。山なんて何処も同じような感じだし…。」
その日はあれやこれや話して疲れてたので寝ました。

次の日私はバイトに行ってて暇な深夜の時間に入り、ぼっーとしてると電話が鳴りました。
「私だけど。今いい?」
彼女からの電話でした。
「暇だからいいよ。お客来たらすぐ切るね。
「うん。さっき寝ててまた夢みたいなの見た。
何か暗い木の部屋にいてね。私の他に4人の人が立っててね。
また4人とも突然倒れて気がついたの…。」
「何だろう。不思議だね。二日も連続で見るなんて。」
「何か思い出していくのが怖いよ。」
彼女の声は震えていました。
「大丈夫だよ。疲れてて変な夢見てるだけだと思うよ。
昔あったことじゃないんじゃないかな。
あっ、お客さんきたから切るね。」
「あ…。うん。ありがとう…。」
彼女は何処か悲しそうな声で言い電話を切りました。
続く