[愛の呪い]

田舎にある俺の家は小さいけど神社で、何やら呪い関係の神様がいる。
昔は神社の裏の森で丑の刻参りとかする奴がわんさかいたらしいけど、
俺らの代になるとあまり見ない。(過去5,6回くらい見たけど)
俺は神社の息子でも次男で全然継ぐ気も無く、霊感さえほぼないんだけど。

そんな俺の家の神社へ、俺の幼馴染で今は都会に出て行った友人の
武久が来た。
久しぶりに会って、色々話して、今晩は家へとまることになった。
妹も話に入ってきて、盛り上がってきた頃に
「昔よく遊んだよなー、お前と俺と、さつきと千歳ちゃんで」
と、俺は言った。
さつきって言うのは俺の妹、千歳ちゃんは武久の妹。
すると、武久は突然深刻な顔になった。
俺も妹もびっくりして、しばらくの沈黙の後、

「今日は、千歳を呪いに来たんだ」

と武久は言った。

「は?何言ってんだよ」
と俺は言った。
「まあ聞いてくれ。」
武久はさっきまでのテンションが嘘の様に、静かに話し始めた。

千歳ちゃんはもともと体の弱い子で、俺らと遊んでいたときもあまり激しい運動は
控えろと親に言われていた。
そんな彼女もちゃんとした大学に行き、婚約者も出来たということで、
武久の家はおめでたい感じのムードが漂っていた。
そんな中、千歳ちゃんがたびたび吐くようになった。
「できちゃった?」と始めは思ってたらしいけど、
産婦人科に行くとそうではなかったらしい。ただ、「●●病院へ行け」と。
そこはその地域でも一番大きい病院だった。
千歳ちゃんと武久と、両親と、不安になりながらもその病院に行ったらしい。
そこで千歳ちゃんを診てもらった結果、長期の入院が決まった。
両親はそれだけでとても青くなり、「いままでそんな長い期間は無かったのに」
と、入院が決まっただけで母親は泣いた。
(だいぶ高齢の出産だったようで、とくに千歳ちゃんは可愛がられてた)
そんな中、医者は武久だけを呼んで、個室に武久は行った。

「まず申し上げますと、千歳さんは重い病気にかかっています」
医者は病名と、発病してからの期間を詳しく言った。
「このままでは徐々に身体の自由がきかなくなり、やがて死にいたるでしょう。
 しかし、進行しすぎていて治る可能性が低い。
 あの弱い身体では、手術にも耐えられないでしょう。」
医者は続けていった。
「このことはお母様にはしばらくお話にならないで下さい。
 急に話すとショックが大きすぎるでしょう」
武久は信じられなかった。
「・・・はい」
それだけ言って、病室にいる父を呼び、詳しく話した。
「あと1ヶ月くらいで寝たきりになるって。・・・それで、死ぬって」
父も泣いた。そのときに武久も初めて泣いた。
あれだけ元気だった妹が、もうすぐ死ぬ。やがて昏睡状態になって、・・・
そのときに、「絶対母さんと千歳には知らせてはいけない」と約束した。

「今は?」
俺は言った。そばで俺の妹が泣いている。
「今はもう植物人間状態。でも死ぬまでにはもう少し時間があるって」
「それでなんでお前が呪うんだよ!」
俺はさっきの言葉と今の話がうまいことかみ合わなくて、苛苛した。

続く