[先客]
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二つ目の門(図、横部分の)を過ぎた頃、校庭の奥にあるプールから、誰かが出てきたのが見えた。
(Bは視力がいい)
そこをゆっくり下りて、こちらに向かってくる人がいて、Bはそれを私だと思い手を振ったが、向こうは無反応でどんどん近付いて来る。
図の一番上の門から少し左に、小さな金網の扉があるのですが、彼女はそこから中に入ろうと考えた。
すると、一台の車が近付いてきて、横で止まった。Bはそれを私達と知らないので、「?」と思い、さっさと中に入ろうとした所で、私から着信が。
Bはこちらに近付いてくる人の方を見ながら、すぐさまそちらに向かおうとしたらしい。そこでCに声をかけられ、助手席に乗る私に気付き、驚いた、と。
淡々と話すBに、私はおぞけが走った。
もし、私が電話に出なかったら?
もし、Bが敷地内に入っていたら?
コンビニに着いて、先程あった出来事を皆に話すと、私達は急いで残り二人に場所変更のメールを送った。
ほっと一息ついてから、友人の一人が「Bの見間違えか、先客じゃねーの?」と言ったが、リアルタイムでBのあの様子を見ていた私とCは即座に否定した。
後者だったとしても、夜中に一人でプールから出てきた、なんて、明らかに普通じゃない。
とりあえず、もう一度中学校へ戻って確認してみようという話になり、Cの車に乗り込んだ時だった。
ハンドルにもたれて、Cが前を見据えてたまま、発進しようとしない。
「どうしたの?」
「いや、あのさ、……これって……」
Cが指差した先。
フロントガラスの右下に、くっきりと手形が。しかも、手をつけてから、そのまま下にずらしたような、5本の指の痕。
内側からついたそれを、Cは顔をしかめながら拭き取った。
間違ってついたんじゃ?と言ったが、Cは「こんな所腕伸ばさなきゃ触れないし、第一触らねえよ!」と怯えていた。
その後Cはコンビニで塩を買って車にまいていました。
結局その日は、最初集まった友人の家で飲み明かして、解散しました。