[こっくりさん]

漢字で『狐狗狸さん』と書くそうです。
『狐(きつね)狗(いぬ)狸(たぬき)さん』ですから動物霊を呼ぶのだとか、様々な説がありますが
何やら、こっくりさんを信じなかったり冒涜したりすると祟るとの説もあるそうですから、あまり変な事は言わないでおきましょう

実際に、私がこの話を聞いたのは、前回の話を聞いたときよりも古く、私が高校に通っていた頃ですから、今からもう十三〜四年前の話です。
同い年の女の子が中学生の頃に体験した話ですから、実際に事が起こったのは今からもう十五年以上も前になりますね。
放課後の教室に女の子が四人、机の周りを囲んでいました。『こっくりさん』をやる為です。
学校では『エンジェル様』が流行っていたそうですが、『昔ながらのこっくりさんの方が危ないけれども当たる確立が高いから』との理由で、彼女たちはこっくりさんをやっていたそうです。
それまで何度もやっていたので手馴れたもの。
『危険はあるけど、私たちはプロだから大丈夫』と・・・
彼女も後に、『何考えてたんだろう…』と苦笑してしまうような理屈と共に盛り上がっていたそうです。
手際よく準備を済ませ、皆で十円玉の上に手を乗せこっくりさんを始めました。
『あの男の子が好きな女の子は?』
『○×ちゃんが好きな男の子は?』
他愛も無い質問が続きます。
私の想像では、厳粛に物事が進められているものと思っていたのですが・・・
実際に、厳粛にやっている方が殆どなのかも知れませんが、彼女たちは、「きゃあきゃあ」と大騒ぎをしながら盛り上がっていたとか。
そうして散々大騒ぎした挙句、こっくりさんにお帰りいただく事に。

ところがいつもはすんなりと鳥居の場所へ行ってくれるはずのこっくりさん(最後は、紙の上に書かれた鳥居の場所から帰るのだそうです。)が、何故か『いいえ』の方へ。
初めての事に、先ほどまではおおはしゃぎだった彼女たちを緊張が包みます。
何度やっても帰ってくれません。
本来ならば、決して十円玉に力を込めてはいけないのですが、このままでは祟られると思った彼女は、渾身の力を込めて、十円玉を鳥居の方へ運びました。
たどたどしく動く十円玉。
結果、紙は破れ、机に大きな傷が残ってしまいましたが、何とか鳥居の方へ行ってくれました。
皆でほっとしながら帰路へ着きました。
一抹の不安を残しながらも
勿論、彼女は自力で帰したとは言えなかったそうです。
そして、その夜
どうしても、その事を考えてしまいます
『コックリさんはヤバイ』
それは彼女も十分承知していました。
『もしも、また誰かがやろうと言い出したらどうしよう・・・』
そんな事を考えていた時です。
不意に電話のベルが鳴りました。
電話に出て見ると、一緒にコックリさんをやったお友達の中でも一番仲の良い友達でした。
泣いています
彼女は、『何かあったんだ・・・』と直感的に察しました。
怖いです。
自分も当事者のひとり
しかも、無理矢理こっくりさんを追い返したのは自分なのですから。
でも、怖いながらも親友です。
何とかなだめておそるおそる話を聞いてみました。

続く