[こっくりさん]
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最初に驚いたのは、その娘も自分がこっくりさんを追い返したと思っていた事。
そう。
電話を掛けて来た、その娘も渾身の力を込めて十円玉を動かしていたのだそうです。
「だから私、こっくりさんに呪われちゃったのかも知れない!!」
その娘は、かなり思い悩んで居た様子です。
「大丈夫だよ・・・実はあたしも・・・」
彼女は、自分も十円玉を動かしていた事を正直に告白しました。
「じゃあ、あなたの所にもこっくりさん来た?」
その台詞を電話の向こうから聞いた瞬間、彼女の胸はぎゅっと締め付けられ、頭は真っ白になりました。
『こっくりさん来た?』
彼女は、激しく動く心臓の鼓動を聞きながら必死に自分を落ち着かせ、「まだ来てないけど・・・」と答えました。
頭の中で何とか状況を整理しようにもどうにもうまく行きません。
『こっくりさんが来る?』
どうしても、その意味が解りません。
「私の所には来たよ。突然、私の部屋のドアが・・・」

コンコン・・・・

「コンコンって・・・」
その娘のセリフと、ほぼ同時に電話のある部屋の扉をノックする音が
その扉の先にはキッチンしかなく、その時間、そこには誰も居ないはずなのに・・・

彼女は思わず、悲鳴を上げました。
受話器に指が食い込む程強く握り締めながら、状況を訴えると、電話の相手は出ちゃダメだと必死に訴えていました。
「私、出て見たの。そしたら、誰も居なくて・・・」
自分の場合、出て見なくても誰も居ないのは解っています。
「誰も居ないから、ドアを閉めたら・・・」

ドンドンドンドン!!!!

凄い音で扉が鳴ります。
もうパニックでした。
その声を聞きつけた家族が大慌てで駆けつけてくれて、ほっとした彼女は電話の相手にも家族と一緒にいる事を勧め、電話を切ったそうです。
その後、他の二人からも交互に電話が掛かって来て、全員が同じように自分の力で十円玉を動かし、全員の所で同じ現象が起きたことを知ったのだそうです。
結果的に、四家族が集まり大騒ぎになってしまったとか。
結局、その夜は友人の家に皆で泊まる事になり、朝まで眠れぬ夜を過ごしたそうです。
その後は何事も無く、平和に暮らしていたそうですが・・・
彼女はそれ以来、ノックの音に過敏になってしまい、彼女の部屋をノックする事は、彼女の家では禁忌となったそうです


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