[盛り塩]

数年前の冬の出来事です。

当時学生で一人暮らしをしていた俺は、大学が冬休みとなり実家に帰省しました。
自分の部屋に荷物を置きに行ったのですが、その時、隣にある姉の部屋の入り口に、
盛り塩があることに気付きました。不思議に思った俺は、その日の遅く、勤務先で
ある病院から帰宅した姉に、なぜ盛り塩などしているのかを尋ねました。
「やっぱり気になるよねー」と言いながら、姉は自室に俺を招き入れ、その理由を
話し始めました。

それはその日から6日前の夜中だったそうです。眠っていた姉は、なんとなく息
苦しさを感じ、目を覚ましました。すると、暖かい蒸しタオルの用な物が、なぜか
姉の首に押し付けられていました。寝ぼけていた姉は、「暖かくて気持ちいい」と
最初は思ったそうです。
しかし、意識がはっきりしてくると、そのタオルは人の手によって自分の首に押し
付けられている事に気付きました。押し付けているのは見ず知らずの中年の女性で
した。

「寒いでしょう」

そう言いながら、タオルをさらに首に押し付けてきたそうです。しかも、その力は
徐々に強くなっていきました。その時、姉は自分が金縛り状態にある事にも気付き
ました。

「苦しい、、このままでは、、何とかしないと、、」必死に体を動かそう、声を出
そうとした姉は、唯一そこだけは動かすことが出来た目で周りを見回しました。
すると、苦しむ姉が寝ているベッドの足もと付近を、3、4歳ぐらいの子供がパタ
パタと走り回っていたそうです。

それを見た姉は、「この子供はもしかすると、この女性の子かもしれない」と思い、
ダメもとというか、やけくそというか、必死の思いで「やめて下さい!やめないと
その子がどうなっても知らないわよ!」と、その女性に対して強く念じました。

すると、その女性も、子供も、すうーっと消えていき、タオルを押し付けられてい
た首も解放されたそうです。

続く