[盛り塩]
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「それが3日間続いたのよ。」少し疲れたような表情で姉は言いました。聞いてい
る俺は、ここがその現場で、つい数日前の事だと思うと、冬の寒さとは別の悪寒が、
背中から首筋へと走りました。姉の話はさらに続きます。

4日目の朝、姉は勤務先の病院に寝不足のまま出勤しました。姉の様子がおかし
い事に気付いた同僚が、「具合悪そうね。どうしたの?」と声をかけてきます。
姉は不可思議なこの「蒸しタオル」の話を同僚に話しました。それが現在進行形で
あるという事も。話を聞いたその同僚は、「この病院の別の病棟の職員で、その手
の事に強い人を知っている。」とのことで、その人、Aさんとします、を紹介して
くれました。姉はAさんにも一部始終を話しました。
話を聞いたAさんは、「あなたが、その、タオルを押し付けてくる女性にも、パタ
パタ走り回っている子供にも見覚えが無いのだとしたら、あなたの部屋がたまたま
霊の通り道になってしまったのかもしれない。だとすると、部屋に盛り塩をすれば、
それで出てこなくなるかもしれないわよ。」とのアドバイスをくれたそうです。

その日帰宅した姉は、Aさんに言われた通りに盛り塩をしてから床につきました。
盛り塩の効果はテキメンでした。姉は朝まで何にも邪魔されず、4日ぶりに熟睡で
きたそうです。その日スッキリした気分で出勤した姉は、早速お礼と報告をするた
めに、Aさんを訪ねました。
「おかげさまで、あの女性も、子供も、誰も来ませんでした。ありがとうございま
した。」そう報告する姉にAさんは、苦笑いをしながらこう答えました。

「あたしの所へ来たわよ」

姉に盛り塩をさせたAさんの事を恨みに思い、「余計な事を教えやがって」という
ことなのか、「蒸しタオル」の女性はAさんの家に現れたそうです。ただ、Aさん
はその手のものを、ある程度寄せつけない力を持っているとの事で、家の中までは
入ってこられなかったそうです。ただ、一晩中「蒸しタオル」をAさんの家の壁や
窓に、

「びちゃっ べちゃっ」

と投げ付けていたそうです。Aさんは夜明け前、やっとその女性があきらめて消え
るまでは寝るに寝られず、ほぼ徹夜になってしまったとの事でした。
「とにかく、あなたの所にはもう行かないと思うわ。」とAさんは言ってくれたそ
うです。

これが盛り塩の理由でした。姉の部屋が霊の通り道になってしまったのなら、隣に
ある俺の部屋も、、、話を聞き終えた俺はすぐに、塩を取るためにキッチンへと向
かいました。

 その夜俺は、、、と言いたい所ですが、俺には何も起きませんでした。しかし、
何も無かったとは言え、恐怖の一夜だった事は間違いありません。


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