工務店は4階建て、長方形のさほど大きくない建物で1〜3階分の窓、扉は全て
トタンで打ち付けられていて、まだ侵入したことはなかったのです。
“この部分、持ち上げたら通れそうだぞ”
未知の探検に、惹きつけられるようにそのトタンをめくり上げてみると、
ドアの下半分が抜けていて、充分通り抜け出来るようになっていました。
のぞくと中は真っ暗だが、トタンの小さな隙間から細い光がところどころもれていて
目の前にあるドアの「給湯室」という文字もなんとか見えるくらい。
不思議と熱気が吹き付けてきて(トタンが陽に焼けて?)
何かたとえようのない匂いが吹き付けてきて蒸しかえりました。
耳をすませましたが物音は聞こえません。
探検心が猛烈にわきかえり、既に犬のことは頭からとんでいました。
中に入ってみると事務所の部分は棚等が倒されていてぐちゃぐちゃに荒されているようで、
自然に2階への階段へと足を進めました。階段の手摺のところにはトタンに塞がれていない
4階からの光が届いて、誘われるようにそのまま4階へ。
見たところ4階は一本の通路が奥まで延びていて、部屋番号の付いたドアが左側に並び
右は全て窓で丁度倉庫や飯場が見渡せるようになっていました。
なんとなく緊張も解け、どうやら社員寮であるその部屋を順々に覗きながら奥へ進んで行きます。
各部屋には作業服とか靴下やそんなものが落ちているだけで大したお宝は見つからず、
ついにどん詰まりの部屋の扉のノブに手をかけました。
中は他の部屋と違いカーテンが閉めてあり薄暗くなっていました。
最初に目についたのは部屋の中央にひかれた布団でした。
まるで今まで誰かが寝ていたかのようにめくりあげられた掛け布団、
周りに散乱するマンガ、エロ本、ゴミ。
その部屋には他の部屋にも増して凄い生活感が漂っていたのです。
ちょっと薄気味悪さを覚えつつも、エロ本を見たりした後に、更なる獲物を求めて
押入れの襖を開けました。
上段には大きく丸められた新聞紙が突っ込まれていました。
続く