[開かずの間]

実家が寺なんだけどさ、あかずの間があるのさ。
子供の頃から気になってたけど、肺結核で死んだ人を隔離した
部屋だからあかずの間にしてる、病気になるから
あけちゃダメって言われてたのさ。でも大人になってから
いくらなんでも結核菌単体で生き残ってるわけないしなぁ…
って気づいてコソーリ入ってみたのさ。
思った以上にきちんと片付けられていて、埃が積もってるくらいで
ちゃんと窓から光もはいってるし、さして怖い感じの部屋じゃなかった
んだよ。子供の頃は前を通るのも怖かったのになぁって、なんか
拍子抜けで・・・

したら部屋のおくに、長い髪の女性がいるじゃありませんか!
めちゃくちゃぎょっとしてあわてたさ。いったん部屋を飛び出して
ぜいぜいいったあと、あわてて茶の間に戻ってみのさんのTVを
みて心を落ち着かせたのさ。みのもんたのトークの俗っぽさに比べ、
なんだかその長い髪の女の姿が異様に非現実的に思えてきて。

よせばいいのにもう一度のぞきにいったんだよ。とても現実とは
思えなくてね。
したらまだいたんだよ、彼女。人形だったんだよ、よくできた生人形。
なんだぁ!おどかしやがって…正直ほっとしてやっと部屋を見回す
余裕ができたんだよ。油絵がたくさんあって、昔はオイルが臭かった
って母親が言ってたなぁっておぼろげに思い出したよ。
だんだん度胸もでてきて、あの人形をしげしげ眺めることができる
ようになったんだ。実に良くできた人形で…ほら、わかるだろ?
年甲斐もなくめくってみたくなったんだよ、着物の裾を。

続く