[ババさまの祠]

うちはかなりの田舎に住んでる。
代々神社をやってるんだが(俺の家のは小さい。本家がでかい)
俺と妹は小さい頃から継ぐ気なんてさらさら無く、兄と姉がときどき神社についての勉強(?)
みたいなのしてた。
だから俺は自分の家の神社がどんな神様を祀ってるとか全然知らないわけ。

そんな俺と妹と、姉ちゃんが家で留守番してたときのこと。
俺の家は古くて、便所が家とはなれたところにある。
ぼっとんというか、気持ち悪くて、妹は極度の怖がりなんでいつも俺がついてってた。
神社の裏に便所はあって、その奥は森みたいになってて
祠とかがぽつんと建っててあんま近づくなって言われてた。
妹が夜中に起きてきて、「お願い。トイレついて来て」って言われたもんだから目を擦りながらついてった。
妹が入ってるとき、なにやら森の奥のほうから音が聞こえてきた。
カーンみたいな、コーンみたいな、鉄と鉄がぶつかり合う音みたいなの。

妹が出てきてから、音のするほうに一緒に行ってみることにした。
「やめとこ、ねえ、怖いってば」とかブツブツいってるけど俺は気にせず行った。
もともと妹にはちょっと霊感があるから、何か感じてたのかもしれない。
音のするほうにだんだん近づいていくと、人間がいることに気付いた。
でもそいつの風貌が恐ろしいの。顔に色塗ってて(赤?茶?)目なんか開ききってて
するとその女が(多分女。年齢はわからない)
「おまえたちhdfg、k;!!!!」みたいに叫んできて石投げながら追いかけてきた。
妹も俺もわけも分からず半泣き状態。無我夢中で逃げた。
そこに姉ちゃんが来て「よくも!かえれ!!」みたいなこと言って
「カルヅゲタマが知ると」とかその後叫んだ。あまり聞き取れなかった。
女は森の奥へ逃げていった。姉ちゃんが来なかったらどうなってたんだろ・・・
俺が「姉ちゃんありがとう、何だろ・・・あいつ」って言ったらそばで妹がしゃくりあげてる。
姉ちゃんは「さつき(妹)を部屋に連れてって。あとで話すから」って言わった。
姉ちゃんもちょっと青ざめてた。俺と妹はそれ以上に青ざめてたけど。

妹が布団に入って、その部屋で姉ちゃんは俺と妹に話してくれた。
まず「さつき、見たんだね。アキ(俺)は?」って言われた。
あの女のことかと思ったけど、どうやら違うらしい。


俺の家族の名前は俺含めて仮名です。

「まさかあんなのがまだいるなんて。さつき、詳しく言うとどんな感じだった?」
「うん、初めて見たから詳しくは分からないけど、女の子だった。
 凄い髪が長くて、女の髪にぶらさがってた」
妹と姉ちゃんが何やらそのようなことを話している。
あの時はたしかに女の子なんて居なかった。髪の毛は女も長かったけど、
そんな人間がぶら下がるほどの長さでもなかった。
ていうかぶら下がれるの?人間。
「アキは見えなかったんだよね?」って言われたから「うん」って言うと、
姉ちゃんは話し始めた。

なにやら俺の家の神社は昔呪いの方の御祓いとかもしてたらしく、
あの祠に居るのは昔地方一帯に呪いをかけてた神様らしい。(俺たちは「ババさん」とか「ベベさん」とか呼んでた)
その影響かもしれないが、俺の家の神社の裏では時々呪いの儀式が行われていたらしい。
本来ならば他人に気付かれてはいけないものらしく、
物音は立てずに行われていたので俺らは気付かなかったらしい。

俺の家の神社でやると、跳ね返った呪いが祠で受理されるのだという。
今回は一番オーソドックスな「丑の刻参り」ではないだろうか。
俺の推測だから分からないけれど、多分本格的なものだろう。
姉ちゃんはそのあとも色々語った。
今回のあの少女はここの神社に居た霊ではなく、外から入り込んだものであろうということ。
なんかこっちの地方の霊ではないらしい。(何で分かったのかは聞いたけどスルーされた)
そして恐らく姉ちゃんでは力が足りない、兄ちゃんか母ちゃんでないと駄目らしい。
あの女は最近うちの神社に昼間決まった時間に御参りに来ていたらしく、
そのときの服装は決まって赤いワンピースだった。
まさか丑の刻参りをするとは、兄ちゃんでも思わなかったらしい。

「詳しいことは私の口からは全部いえないから、
 明日両親と兄ちゃんが帰ってきてからにしようか」
そこで話は終わった。
多分森では続きが行われていただろう。
俺がトイレ我慢できなくて、コソコソもう一回行ったときも音してたからorz

続く