[イサルキ]
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ところが事件はウサギチルドレンの死でまた盛り上がります。
 今度は1匹が紐で吊り上げられ、残りは部屋の穴の隅っこに
プレスしたかのように押し込められている状態でまたも一同騒然としました。
親ウサギはそれを横目に人参やレタスを食み、一同は一種異様な空気に
飲まれました。現場状況は以前のインコ事件と同じでありました。
 その中、後ろであの彼が大声をあげて言ったのです。「ボクは
今回もみました。本当に見ました。」と集まった生徒、教職員に向かって
言ったのです。

 その時です。自分があくまでそう感じただけなのかもしれないのですが、
集まった生徒、教員全員が文字通り彼を「無視」したのです。普通
幾人かは「またこいつ言ってやがる」と冷たい目を向けるはず(実際今まで
それがデフォだった)であるのに、そこにいる人間全てが彼の存在自体を
「無視」したのです。熱気の中に冷えた空気が混ざり、自分には
異様な光景と映りました。

 その時初めて自分はその彼という存在に興味を持ち、
「君、本当に見たの?」
と尋ねたのです。すると彼はしっかりこちらを向き、
「うん、僕は見た。真っ黒なんだよ。あの人は、真っ黒だった。」
と返してきました。
 自分がその人は黒い服を着ていたのかと聞くとどちらか良くわからないと
返してきました。普通は黒い服を着ていたのだと解釈するのが多いのに、
そうしないのは子ども故かなと感じました。それでどうしてその時
先生に言わなかったのと聞くと、彼がこう言ったんです。
 「だってね、それは駄目だよ。だってそうしたらボクいるのがばれちゃう
でしょ?イサルキにつかまったら駄目でしょ?」
 でしょ?と確認されてもそのような話を聞いたことがないので、
自分は返答できませんでした。

 その後なんですが、結論から言うと彼をその後みたことはありません。

 自分の学校で転校する子は必ず全校集会でお別れ会的なスピーチを
繰り広げるのですが、その中に彼はいませんでした。
よって、転校していないはずなのですが、その後中学へと進学する際、
私学へ行った子らの中にも彼の姿は存在していませんでしたし、
公立へ進んだ我々の中にもいませんでした。アルバムの中にも当然
存在していませんでした。

 自分が疑問に思うのは以下の点です。
まず、どうやって犯人は飼育小屋で犯行に及んだのか。次に、
彼がそっとみたものは何か、「イサルキ」とやらであるとなぜ彼は
断定したのか。そして「イサルキ」とはいったい何か、なぜ2度目のあの時
生徒、教員までが彼を無視したのか、「イサルキ」に見つかったら
どう駄目なのか。

 まぁ、真相全ては藪の中です。ですがいわゆる「ヒサルキ」の
まとめサイトと関連サイトを目にしたことで、急にこの出来事について、
そしてあの時の群集の中に混じる薄ら寒い空気を思い出したので、
昼日中ではありますが、書かせて頂きました。


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